■芸能｜バラエティー　そこにある危機

バラエティーとはいったい何だ。何をしても許されるのが、バラエティーというテレビ番組なのだろうか。お笑いとは何だ。話題になれば勝手に人の真似をしてふざけるのが、お笑いなのか。いつからオリジナルのない、偽物だらけのお笑いになったしまったのか。視聴者がそれを望んだのか、そうであれば高視聴率のはずだが、そうでもなさそうである。違うか。

フジテレビ系「めちゃ×２イケてるッ！」という番組で、STAP細胞問題で何かと話題の小保方さんをネタにしたコントをやろうとしたらしい。そこでは、いかにもフジの能天気な振る舞いらしく、「小保方」さんを「阿呆方」さんと変えてお笑いにしようとした。まるで小学生あたりが考えそうなネタである。

これは、たんなる嘲り、または愚弄、揶揄でしかない。お笑いに転化しているとは到底思えないが、如何に。
【１】「嘲り」は、ばかにして笑うこと。
【２】「揶揄」は、冗談や皮肉を言って、軽く相手をからかうこと。
【３】「愚弄」は、相手をばかにしてからかうこと。相手の人格を無視するような言動をいう。

なお、このコントは予告の時点で抗議があり、放映は見送られている。したがって、観てもいないのに批判するのはどうかという意見も有る。しかし、そもそも阿呆と名前を付けた時点で中身如何に関わらず問題であった。誰でも阿呆と呼ばれてうれしい訳が無いだろう。観て頂ければ、揶揄、愚弄した内容ではないというのは通じないはずである。違うか。

このネタを本気で面白いと思ったのか。現在、理研全体の問題として闇が深そうな体を成している。笑いに転化するタイミングとして倫理的に問題は無いか考えなかったのか。どうもいずれもたいして考慮はしなかったようである。その証拠に、小保方さんの弁護士から抗議があった後も、製作陣は経営トップに表現をソフトにして放送したいと申し入れていたそうである。

この番組の主役は、かつて鬱をこじらせて入院していたはずである。まず、それをネタにすることができるか。たぶん、それはしないに違いない。しかし、他人ならどこまでも土足で踏み込んで笑いにする。かれらは、それが許されると考えている。とにかく、テレビ局ではバラエティーというものを、高く評価し過ぎである。また、それを支える芸人たちもおなじくである。

いまのテレビ制作の現場はどうなっているのか。企画力が失われているのではないかと思わざるを得ない。かつて、同じフジテレビで放送されていた「オレたちひょうきん族」などでは、前述した番組と同じくパロディーではあってもどこか独自性というものが備わっていたはずである。

ところが、最近のバラエティーでは、そのものずばりのパクリばかりではないか。違うか。例えば、ふなっしーのパクリとかは、あまりに安易である。表現の自由は保障されてしかるべきと思うが、如何せんテレビのバラエティー番組の品性、品質が落ちていて、その対象として考えるのも憚れる次第である。

テレビ局関係者は、おもしろいという内容を曲解してるとしか思えない。テレビ局関係者のあいだでは、この程度でことで問題となれば「テレビがつまらなくなる」という現場の声があるそうである。いやはやである。おもしろいか、つまらないかだけがテレビなのか。かれらには、その程度の媒体でしかないようである。

結論、つまらなくしているのは、テレビ局関係者ではないのか。世間の風潮のせいにするのは間違いである。あしからず。
なお、下請けのAD等の関係者はあまり関係はないかもしれない。

追記、テレ朝「ロンドンハーツ」という番組でも、小保方さんをネタにしたようである。しかし、何故かそれは問題とされていない。それは、たぶん笑いの方向性が違っていたからである。一方、フジテレビのそれには悪意が感じられるのである。

今回、コントの放映が見送られた某出演者が反論をしているが、そもそも反論する時点で、笑いがずれていることに気が付いていない証である。とにかく、反論するよりもどこからも文句の出ないオリジナルを創造したらいいはずである。