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■書籍|AKIRA 大友克洋

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AKIRA コミック 全6巻完結セット

天才・大友克洋の不朽の名作

日本の漫画界(正確には世界的に)に燦然と輝く金字塔を打ち立てたのが、大友克洋のSF漫画「アキラ」である。これには、あまり異論はないと思うが、いかがだろうか。

本作は、あまりに有名過ぎて紹介するにも若干勇気がいる程である。大友は、80年代に重要な作品を2作続けて発表している。

80年〜81年の「童夢」、82年〜90年の「アキラ」である。「童夢」は、次の飛躍への序章としての役割となり、「アキラ」の壮大なSF世界の構築と展開に繋がった。

本作の出来映えはあまりに素晴らしく、その完成度の高さ故、大友もかなり満足感を感じたようである。本作の完了後、2012年まで漫画の連載をしていない。

その間、大友はアニメ映画に注力することになる。88年の「アキラ」のアニメ映画化を監督したことにより、元来、映画監督になりたかった本人の願望が目覚めてしまったのだろう。彼の漫画ファンは、もっと彼の作品を観たかったと思うのだが….。

アキラ|ストーリー

1982年、東京は、新型爆弾の爆発により崩壊した。これをきっかけとして世界は戦争に、そして荒廃していった。2019年、高層ビルが乱立する新首都「ネオ東京」が建設されていた。また、2020年のオリンピック開催を機に、「旧市街」でも建設ブームが興っていた。

金田正太郎が率いる暴走族の少年達が、ハイウェイを疾走していると、爆心地近くで、謎の白髪の少年と出会う。軍の超能力機関から脱走した、超能力者26号・タカシであった。暴走族メンバーの島鉄雄は、避けきれずに衝突して怪我を負ってしまう。そして、軍の研究機関にタカシと共に連れ去られてしまう。この事故をきっかけに、鉄雄のなかの超能力が目覚め始めた…。

鉄雄は、41号と命名されその能力を開花させてゆく。研究機関のラボでは、ナンバーズと呼ばれる超能力者の少年・少女達が住んでいた。なかでも「アキラ」と呼ばれる28号は、30年以上に渡って特別に造られた装置に封印されていた。予知能力を持つ25号・キヨコは、アキラがもうすぐ目覚めネオ東京が崩壊すると予言する。

超能力を獲得した鉄雄は、アキラを封印から解き放し連れ出してしまう。そして、建設中のオリンピック・スタジアムに立てこもる。軍はアキラが外に出たことにより、非常事態宣言を発令した。さらに、軍事衛星「SOL」によるレーザー照射攻撃を行うが、鉄雄は行方不明に、アキラは金田とゲリラの一員ケイによって救い出され匿われた。

金田とケイは、東京が崩壊したのは爆弾ではなく、アキラの超能力であったことを知る…。
アキラをめぐって、取り返そうとする軍をはじめ、レーザー照射後さらに力を強めた鉄雄、ゲリラと金田、宗教団体などの間で争奪戦がはじまった….。

アキラ|リアルを超えた現実感

連載は82年〜90年まで、単行本で1巻から6巻まである壮大な物語である。上記したストーリーは、1巻と2巻のはじめまでを要約したに過ぎない。ストーリーの独自性も特徴であるが、何よりも、その描写力がすごいのが大友克洋である。特に、建物の崩壊シーンの描写には、CGの実写映画よりも迫力を感じてしまう。

大友は、リアルを超えた、現実感を描こうとしていた。とアシスタントを経験した高寺彰彦氏が述べている。しかし、これはアシスタントを苦しめたようである。大友は、何しろ天才である。当然のように要求してくる内容に、理解できないことが多々あったようである。

大友の原稿には修正の跡がないらしい、それに対して彼は、「架空の世界に正否なんてないよー」と、また、イメージどおりにいかない場合もあるのでは?。に対して「ないよー」と答えている。天才だ。

物語の時代設定は、2019年となっている。これは、「ブレードランナー」と同じである。これは偶然なのか。どちらかが影響を受けたのか。「アキラ」が、連載を開始したのが、82年である。「ブレードランナー」の公開も82年である。

たぶん、憶測であるが、ブレードランナーの方が制作は先攻しているだろう、したがって大友が事前に情報を知っていたとしても不思議ではない。この件に関してはどこかに情報はあるのだろうが、わたしは知らない。「芸術新潮」にも書かれていなかった。

「アキラ」がアニメとなり、アメリカで公開された時、ブレードランナーに匹敵すると評判になったそうである。

恐るべし!海外のオタク

アメリカには、大変な「アキラ」オタクがいるようで、パトリック・マシアスという人は、映画のセル原画を始め資料を約1万5千枚保有しているそうだ。しかも、単なるオタクではない、自費で「アート・オブ・アキラ」と題した展示を全米で行っている。また、彼はピクサーやディズニーでも、講義したそうである。「アキラ」恐るべし!である。

参考文献:芸術新潮2012年4月号、ウィキペディア

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