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コラム|コロナ禍とその対応システム この経験を次に活かせるか

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失敗の本質を繰り返すな

世界が不思議がるコロナ禍への対応とそのゆくえ

 コロナ禍は、いまだ収束したとはいえないが、日本ではだいぶ落ち着いてきたのは事実だろう。第2波、第3波があるのか、まだ不明である。

 日本政府のコロナ禍への対応には、批判が多く見られた。また、専門家会議の対応もなにかと国民の不安を助長してやまなかった。

 とにかく、不測の事態への対応が後手後手だったのは否めないだろう。当方は、アベガー、アベガーというつもりは毛頭ない。

 なぜなら、安倍首相個人が対策を立てている訳ではないからだ。日本の政府を動かしているのは、実は政権にへばりつく宦官(官僚)であるのは言うまでもない。

 内閣府の一部の官僚、財務省、経済産業省などの思惑が絡みながら、政策が決定されていくようだ。最終決断するのは安倍首相であるので責任は大きいが、その裏では、魑魅魍魎が跋扈している。

日本のコロナ対策「奇妙な成功」 低い死亡率
米外交誌フォーリン・ポリシー(電子版)
 日本の新型コロナウイルス感染対策はことごとく見当違いに見えるが、結果的には世界で最も死亡率を低く抑えた国の一つであり「(対応は)奇妙にもうまくいっているようだ」と伝えた。

 同誌は、日本は中国からの観光客が多く、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保も中途半端だと指摘。感染防止に有効とされるウイルス検査率も国際社会と比べ低いが「死者数が奇跡的に少ない」と評した。

 論評は「結果は敬服すべきものだ」とする一方、「単に幸運だったのか、政策が良かったのかは分からない」と述べた。

 海外では、以前は日本の対応に批判が主流だったが、いまではもはや理解できないが、ある程度成功している、という認識に変わりはじめている。

 本当にそうなのか判らないが、そうであればいいと、神に祈る以外にはない。

痛ましい太平洋戦争の記憶

曖昧な見通し、楽観的な戦略

 今回のコロナ禍での政府対応が、太平洋戦争時の軍部の対応と似ていると指摘した知識人がいた。その理由は、柔軟な対応性を欠いた政策の実行にあった。特定の戦略に固執し、先への見通しが甘く、対応準備がおろそかになっていた。

 太平洋戦争では、真珠湾奇襲の成功体験が後々まで尾を引いた。序盤こそ連戦連勝だったが、アメリカの準備が整うとあっという間に戦局は逆転した。

 当時の日本陸軍の戦術は、極端にいえば白兵突撃一本槍だった。大声をあげながら、総員突撃することで、相手を圧倒することを目的にした。

 しかし、アメリカの重火器の装備が充実し豊富になると、日本軍の白兵突撃は、アメリカ軍の止むことのない射撃にむやみに倒れるばかりとなった。

 緒戦の成功体験そのままに戦争が進むとは限らない。そんな当たり前のことも当時では、通じなかったようだ。戦争末期でも日本軍はバンザイ突撃をしている。

 そして、痛ましい日本の敗戦とその責任は、いまだ曖昧なままである。

コロナ禍で思い出す、失敗の本質

組織の脆弱化というお家芸

 日本は、戦後70有余年を経てもなお、大戦時の「失敗の本質」に呪縛されて、その経験を活かしていないといわれる。

 それはバブル崩壊後、多くの企業が陥った組織の脆弱さに見て取れる。また、似たような組織づくり、不適切な対応もおなじくであった。

『失敗の本質』が指摘した、日本的組織の弱点
 想定外の変化、突然の危機的状況に対する日本の組織の脆弱さは、私たちが今まさに痛感するところです。名著にズバリ「予言された未来」を現代日本は体験しているかのようです。

「いかなる軍事上の作戦においても、そこには明確な戦略ないし作戦目的が存在しなければならない。目的のあいまいな作戦は、必ず失敗する。(中略)本来、明確な統一的目的なくして作戦はないはずである。ところが、日本軍では、こうしたありうべからざることがしばしば起こった」(「失敗の本質」より)

 今回、遭遇しているコロナ禍は、まさに想定外だったのは言うまでもない。そこで起きた政府の対応は、甘く見ても後手後手、右往左往の呈だったのは否めない。

 一例として、供給不足となったマスクの国民一律の配布である。マスクの製品仕様がいちじるしく不適格であり、担当者の能力不足が露呈した。

 マスクのサイズや素材などは、製品づくりのイロハである、それも出来ずに作ろうとしていた。実に甘い見通しといわざるをえない。

 もし、それが戦争時の製品であれば、現場(戦場)ではたちどころに死につながるはずだ。まさに「目的のあいまいな作戦は、必ず失敗する」の通りである。

 素人目線で考えると、日本政府がマスクを一旦買い占めて、供給をコントロールした上で、市場に流すという方法もあったと思うがいかに。

 そうすれば、マスクの転売や、高値での販売などを防ぐことができたはずだ。言うは易しであるのは十分承知であるが、検討されたかどうかが問題である。

 たしか、台湾では似たような政策を実行したはずだが…。

この経験を次に活かしてもらいたい

長期かつ柔軟な戦略性が必要か

 政府には、今回の貴重な経験を次の対応に活かしてもらいたい、と切に願います。PCR検査を拒否しまくった保健所などは、すぐに対応策を検討すべきだろう。また保健所のせいではなく、厚労省の責任であることをはっきりすべきである。

 なにより国民を不安にさせて、曖昧なままやり過ごそうとした厚労省の対応など、なにが問題であったか検証が必要であるのは言うまでもない。

<長期視点のパンデミック対応策>
・全体的な対応システムの構築

・パンデミック対応=基本戦略の策定
・防疫、検疫体制の整備
・PCRなど、検査の充実化促進
・隔離、治療体制の整備
・広報、告知の体制整備など

 とにかく、「いつ、なにを、どのように」という具体的な対応策の軸を再度整理し直してほしいと思うがいかに。

 上記した以外にも、やるべきことが多数あろうと思うが、とにかく今回の政府の対応を端から見ると、いかに準備不足だったかと言わざるをえない。

 とくに厚労省のやろうとしてることが、曖昧模糊として国民には理解不能だった。いかに事前に対応策がなかったかが露呈している。

 厚労省の明らかな失敗にもかかわらず、現時点で海外に比べて感染者も死亡者も少ないのは、まさに幸運といわざるをえない。

画像引用:https://pixabay.com/ja/

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

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