とんでもないアメリカ事情、これは遺憾である
ラジオ「たまむすび」出演者左から 山里さん 町山さん たまちゃん
いやはやアメリカって国は、と思わず言いたくなる!
「知ってても偉くないUSA語録」は、同じ著者による「教科書に載ってないUSA語録」の続編である。何故、2ではなくタイトルが変更されたか。それは、なんとも珍妙な理由にあるらしい。なんと、前作は英語の教科書と間違えて買う人がいたらしく、出版社に英語の勉強にまったく役に立たないと文句があったらしい。
たしかに英語の勉強には役に立たないことばかりの内容かもしれない。たぶん購入した人たちは、「教科書に載っていない」という文言に引かれたに違いない。紛らわしいといえばその通りかもしれない。とにかく、教科書に載っていないことを勉強しようとする真面目な人たちを惑わしたのは遺憾である。
そこでタイトル変更と相成ったという訳である。しかし、中身は前作と変わらずアメリカのなんだか変なとこばっかりがぎっしり詰まった本である。たぶん。
この本は、元は週刊文春のコラムである。アメリカ在住の映画評論家・コラムニスト町山智宏が、現地の政治、社会、エンタメなどの出来事を面白く、またときには怖くなるほどに薄ら寒い背景を交えて伝えてくれる。
その実態は、笑えるがなんだか恐ろしいまでに底が抜けたアメリカをかいま見せてくれる。いやはや、日本の行く末もここにあるのかもしれない。などと思わざるを得ないのは、どうしてか。本書に登場する最新USA語録は以下のとおりです。
知ってても偉くないUSA語録/町山智宏著
<本書に登場するUSA語録>
レッドネック=貧乏白人
キッズヴォート=こども投票
マンスプレイン=男がドヤ顔で講釈垂れること
ドーマ=結婚防衛法
パンプ&ダンプ=ボロ株を使った詐欺
プライムエア=アマゾンの無人ヘリによる宅配
デトロピア=デトロイト+デストピアなど、全74のキーワードを収録。
著者/町山智宏について
町山智宏氏は、1962年、韓国人の父と日本人の母とのあいだに生まれた。いわゆる在日2世である。中学生の頃に両親が離婚しかれは母方の籍に入る。従って国籍は日本にある。父親とはほとんど生活を共にしたことがないと本には書かれている。早稲田大学を卒業した後に宝島社に入社。
編集者として数々のヒットを飛ばすが、小会社に左遷(本人曰く)されて映画雑誌を創刊する。キネマ旬報と諍い(後述参照)を起こして退社しフリーとなる。現在は映画評論家およびコラムニストとして多方面で活躍中である。アメリカのバークレーに在住。なお、編集者時代、一部の方面ではその恐れを知らない活動振りが有名であったようである。
例えば、北朝鮮の「拉致問題」がまだ公になる前から問題視して記事にしたり、「キネマ旬報」が映画記事をバーター取引していることを隠して他社の記事を批判するという、その姿勢に怒り編集部を襲撃(パイを投げつけた)している。ちなみに、町山氏はこの襲撃事件後、宝島社(洋泉社)を退社し独立している。
どうやらなかなか熱い人らしい。テレビなどでは穏やかに見えるが、その語り口調は佳境に入るに従い饒舌となり、ときには問題発言が飛び出す。映画評論では深い知識と客観的な視線が定評であるが、どうも芯にある熱いものをときどき発散せずにはいられないようである。
たしか、スピリチュアルが流行っていた頃、水道橋博士の番組に主演し、当時マスコミに持ち上げられていた霊能者のインチキ性に怒りが頂点に達し「お前霊能力ねーだろ、あるならオレを呪い殺してみろ!」と叫んでいたことがある。ただし、そう言ったあとに「殴りにきちゃだめよ」と笑いを取るのも忘れていない。
かれの怒りは、いわばサービス精神の現れなのか。端から見てる分には十分過ぎるほどに面白い。前述したインチキ霊能者以外にも、かれの怒りの対象となった人は数多くいる。かれの怒りは、何故起こったか。以下、部分的であるが紹介したい。
町山智宏の怒りの対象となった人物たち
村上隆(アーティスト)
村上隆は、いまや日本が世界に誇れる数少ない現代美術の作家である。
この村上は、日本のアニメに端を発した作風で一躍有名となったが、その作風と村上の作家としての姿勢に町山氏はかちんときたようである。
村上の代表的作品に「DOB君」というキャラ?がある。この作品は、どこから見てもその輪郭はミッキーである。そして、ディズニーキャラをパクリ、その可愛さという概念に対して揶揄するような作品となっている。
揶揄的表現はいいとしても、町山氏が怒ったのは村上氏が「DOB君」をパクられたとして某アパレルを訴えて、その和解金として4000万円を受け取ったことにあった。「なんだこのやろー、もとはディズニーのパクリのくせに!」という具合である。現代アートは、パロディ的表現は当たり前であり、そのくせに自分はオリジナルを主張することに我慢できなかったようである。
<ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記より/2004年頃の記述>
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040217
ー村上隆がミッキーマウスを基に作ったキャラクターDOBを他の会社にパクられたと訴えて4千万円せしめた事実を考えてほしい。ご覧のとおりDOBはどう見てもミッキーマウスが元になっている。それはいいとしよう。
でも、そのDOBを他人にパクられると訴えて金を取るのはどういうことか。どうして村上は「僕のDOBもミッキーマウスをヒントにしてますから」と正直に言わず、「私のオリジナルです」などと主張して4千万円も取ったのか?
ラコステをパクったタチワニはパクられても決して訴えないよ!
本当に今さら何言ってるのかと思われるだろうが、やっぱり、どうしても村上隆はムカつくんだ。どうして日本のオタクはあいつをもっと憎まないのか?。ああ、ムカムカする。(以下略)ー
なお、上記内容は2004年頃のものであり、現在では村上氏を多少は理解したようである。日本人が世界のアートマーケットで存在を示すには、特別な手法が必要であったのではないか。そのように感じる次第である。
その他の怒りの対象人物たち
秋元康、高城剛、NIGO、辻仁成、戸田奈津子の翻訳、勝谷誠彦、東浩紀、西武の堤、監督の堤幸彦、等々まだあるが、これぐらいにしときます。
それぞれに町山氏ならではの理由があり、納得するに十分な根拠もあります。しかし、おなじくらい異なる視点もあるかもしれません。興味のある方は、ネットで検索してみてください。
とにかく、町山氏は良い悪いは別にしてエネルギーのある人である。個人的には好感を抱いています。映画評論においては尊敬しています。
<知ってても偉くないUSA語録>
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