最古(温泉)と最先端(アート)の組み合わせで街を活性化する
道後温泉では、いま蜷川実花のアートが見所になっている
愛媛県の道後温泉では「オンセナート2015」が、2016年2月29日まで開催されています。これは、歴史的な温泉街に最先端アートを導入した”温泉アートエンターティメント”という試みだそうです。これまでにない温泉街の新たな魅力を提案・発信していくことで、古い街の活性化を図るという取り組みである。
この試みは、2014年に道後温泉本館改築120周年を記念して行われたものであり、好評により前年に引き続いて2015年は5月から開催されている。
蜷川実花×道後温泉 道後アート2015とは
テーマは、「最古にして最先端。」
2014年に開催されたアートフェスティバル「道後オンセナート 2014」のテーマ、「最古にして、最先端。」を引き継ぐ形で道後を中心としたエリアで展開されるアートフェスティバル。蜷川実花さんをメインアーティストに迎え、2015年5月1日から10カ月の会期中に道後地区に様々なアート作品が展開されます。<開催概要>
名 称:蜷川実花×道後温泉 道後アート2015
テーマ:最古にして、最先端。温泉アートエンタテイメント。
会 場:道後温泉およびその周辺エリア
会 期:2015年5月1日〜2016年2月29日詳しくは以下をご覧ください。
道後アート2015「蜷川実花×道後温泉」公式サイト
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このような地域活性化ならいくらでもやって欲しい!
個人的な趣向性の問題かもしれないが、地域活性化はこのような文化的な試みを中心にやって頂きたいと切に願います。すべての人に受け入れられるかどうかは判りませんが、個人的には萌えキャラよりはずーといいと思います。
なによりも興味深いのは、「最古にして、最先端。」というテーマ性にあります。当方も似た様なことに感心があったので、この試みは十分過ぎるほどに魅力的なものと感じています。できれば体感したいのは言うまでもありません。
蜷川実花さんの作品が持つ力は、展示する場所を選ばずに発揮するようです。モダンにもクラシックにも、また洋風にも和風にもです。
そして、その場を一瞬にして生まれ変わらせる力を有しています。しかも、それはあくまで現存する環境を活かしながらである。既存の環境を大きく損なう事無く、そこに新たな魅力をもたらす。それが蜷川作品にはあると思われます。
道後温泉の試みと新国立競技場の関係性
この道後温泉アート2015については、「芸術新潮11月号」で知りました。そのなかに、建築家・安藤忠雄氏の建築特集がありました。そこで改めて見た安藤建築は、基本的には環境を活かしつつ、新たな空間を創出するものでした。
そして、そこにはアートも融合していた。特集のなかの写真には以下のようなコピーが添えられていました。
「風景を含めた場所そのものがミュージアムだ」
「見えない建築。島と海と、一体化させる」
「歴史に敬意を払い、自然を尊重する。光もまた建築の一部になる」
上記の様に安藤氏は、いわば「アートと自然と建築」を一体化することを目指していたと思われます。そのような安藤氏が、新国立競技場でザハ案を強烈に支持したのは何故かと思わざるを得ません。自然や歴史性を無視した単なるモニュメント性は安藤氏の基本的な考え方に反するのではないかと思います。
ちなみに当方はザハ氏のデザインは嫌いではありません。ところでザハ案を選んだ理由を、安藤氏は以下のように語っています。
ザハ案を選んだのは、丹下健三氏の代々木体育館のように100年後にも「この国はすごいものをつくったな」と言われるようなチャレンジグな精神を評価したからです。オリンピックを迎えるメガロポリス東京にはあれがベストと判断した。
これはこじつけではないでしょうか?、安藤氏の建築や著作からはそのような発想は感じられません。1964年の東京オリンピック当時と現在の建築環境は違っているはずです。国威発揚の意識で建築をつくるのは時代にそぐわない。それを身をもって示していたと思うのですがいかに。
道後の発想は、かつては安藤氏にも共通していた
道後温泉アート2015から話しは逸れましたが、実は共通していることもあります。それは、環境や歴史の活かし方です。道後はスクラップ&ビルドではありません。あくまで既存の歴史を尊重した上で新しきを取り入れるという発想です。
それに引き換え、新国立で安藤氏が推進しようとしたのは歴史性を、環境を壊して新しきものをつくろうとしました。しかし、安藤氏はかつては前述したように自然を生かしつつ、新たな空間をつくりあげる建築家でした。
本来であれば、歴史性を考慮し、自然や環境を壊さない建築を推進していてもおかしくはありません。旧国立の土台を活かしつつ、新しきものとする手法こそ、安藤氏には相応しかったのではないか、と今更ながらに思います。
道後温泉アート2015の様な試みが、どこでもできるとは思いませんが、地域活性化の策として参考になる試みであるのは間違いと思われます。
写真:道後アート2015公式サイトより
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