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■アート|アートなう(1)ミニマル・アート

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そのアートは、人の痕跡を消そうとした!?

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桑山忠明の作品

抽象表現の極致?、技能と行為の狭間にあったアート

現代美術の痕跡をジャンル別に紹介していく第一回である。年代順にすれば、当然抽象表現主義であるが、当該ユーザーは順番通りが嫌い?なので、あえて「ミニマルアート」からスタートする。

ちなみにタイトルの「アートなう」は、70年代に講談社から発売された「アートナウ」にちなんだものである。当該ユーザーは、それを全巻所有している。(ただし中古で購入した)なお、断っておきますが、美術の歴史を学んだ訳ではありません。あくまで素人である。

「ミニマル・アート(Minimal Art)」とは、視覚芸術におけるミニマリズム(Minimalism)であり、装飾的・説明的な部分をできるだけ削ぎ落とし、シンプルな形と色を使用して表現する彫刻や絵画で、1960年〜70代を通じておもにアメリカ合衆国で展開した。 先行する抽象表現主義を批判的に継承しつつ、抽象美術の純粋性を徹底的に追い求めた。(参考:ウィキペディア)

「現代美術」におけるミニマル・アートは、ある意味では必然であった。それは、往々にしてアートの世界では、流行のスタイルの後には正反対ともいえるスタイルが登場する。必ずしも正確とはいえないが、その傾向は顕著であったはずである。

ちなみに、現代美術の定義は以下を参照ください。

■現代美術の定義 :ウィキペディアより
1. 20世紀初頭のフォーヴィスム・ドイツ表現主義以降を現代美術とする考え方
2. 20世紀初頭のキュビスム 以降を現代美術とする考え方
3. 20世紀前半のシュルレアリスム・抽象絵画(抽象美術)以降を現代美術とする考え方
4. 第二次世界大戦後(1945年以後)の美術を現代美術とする考え方
5. これらとは別に、20世紀以降の美術全体を現代美術とする考え方
6. それ以外のもの

現在では、「1945年以後」とする定義が一番理にかなっているようである。

■現代美術(アートなう)の流れ :代表的なジャンル
1950年代〜
 ・抽象表現主義(アクションペインティング)
 ・ネオダダ
1960年代〜
 ・ミニマリズム(ミニマルアート) 
 ・ポップアート
1970年代〜
 ・コンセプチュアル・アート 
 ・インスタレーション
1980年代〜
 ・新表現主義(ニューペインティング) 
 ・シュミレーショニズム
1990年代〜
 ・メディアアート

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フランク・ステラの作品

ミニマル・アートの目的と、その意義とは

前述したようにミニマル・アートは、装飾的、説明的部分を削ぎ落とすことで生まれたシンプルこのうえない視覚美術であった。その作品の多くは幾何学的形態を呈していた。そして、それらの作品は人の行為が、できるだけ感じる事がないように配慮されていた。

それはまるで、抽象表現主義(ポロック等)の真逆であった。

具体的には表現的手法である伝統的形態ではなく、幾何学という形態が多く選ばれたこともそうである。また、手法も技能を廃して工業的ともいえる仕上げで人の痕跡を消していた。筆の痕跡を残さないためにスプレーでペイントされた。したがって、そこには、人の感情に代表されるエモーショナルな息吹は皆無であった。

ミニマル・アートは、それまでの美術が有していた人の技術を否定して新しい美の概念を打ち立てようとした。それは、後のコンセプチュアル・アートに先駆けたものであった。

ある意味では知性のアートということもできる。それは、抽象表現主義やそれ以前のアートがしていた、繰り返し描き直すという行為を否定した。ミニマル・アートでは、はじめに計画したとおりに制作される。途中で描きなおすという行為はしなかった。というか、それをしないことに意味があったようである。

あたかも工業製品のように設計された美術作品であったといえる。たぶん。

代表的する作家には、フランク・ステラ、ドナルド・ジャッド、カール・アンドレ、ロバート・モリス、ダン・フレイヴィン、ソル・ルウィットなど、また日本人では、桑山忠明(58年以降、米国在住)が有名である。

ちなみ、代表的作家であるジャッドは、ステラを変節漢として誹謗中傷している。ステラは、後にミニマルから新表現主義(ニューペインティング)に表現様式を変えたのであった。

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上/ドナルド・ジャッドの作品 下/桑山忠明の作品

ミニマル・アートとポップ・アートの関連性

ミニマル・アートとポップアートは時期的に重なる部分があったようである。しかし、その表現手法は明らかに異なっていたのは、言うまでもない。ただし、その色味から受ける印象や軽さ(情動感の排除)というものは継承されていたと思われる。

ミニマリズムは人間の行為性を排除していたが、同じくポップアートも人間の感情的な表現とは無縁であった。むしろ傍観したような表現に共通項があった。それはシニカル性(皮肉、冷笑的)とでもいうべきか。

しかし、ポップアートは、ミニマリズムが捨て去った具体的表現というものを伝統とは違う意味で取り戻していた。それはまるで、ミニマリズムの精神性を内包した表現主義というものではなかったか、と感じる次第である。

なお、上記した内容は美術評論家が言う内容とは違う事である。あくまで個人の感想、解釈である。あしからず。

以下は、日本人のミニマルアーティスト桑山忠明氏のインタビューが掲載されたサイト。なお、大変興味深い内容であることをお伝えしておきます。

アメリカを代表するミニマリスト桑山忠明氏へのインタビュー
http://blog.kosukefujitaka.com/2012/02/blog-post.html

<キュレーション 知と感性を揺さぶる力>
キュレーターは、巧みなテーマ設定や作品の選択、ディスプレイなどによって鑑賞者を誘惑し、そのような〈忘れがたい体験〉を演出するとともに、展覧会などの実践を通じ、社会に対して批評や思想の提案を行なっている。

キュレーション 知と感性を揺さぶる力 (集英社新書)

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