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■デザイン|高層建築界の巨人 フィリップ・ジョンソン

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ジョンソンの自宅敷地内にある「ガラスの家」

高層建築界の巨人、ジョンソンの功績!

ポストモダン建築の帝王

20世紀建築の3大巨匠はすでに紹介したが、その巨匠たちと関わりが深く、かれらよりも事実上は最も成功を納めたのがフィリップ・ジョンソンである。

それは何故か、3大巨匠のライトもコルビも高層建築とは無縁に等しかった。

ミースもシーグラムビルを設計したが、決して多くはない。一方、ジョンソンはアメリカ中(特に中西部)に多数の高層建築群を建てることに成功したのである。

その表層的なデザインから、決して評価が高いとは云えないが、建築を建てること(実現させる能力)に関しては、その才能の豊かさを見せたのではないかと思われる。

建築を実現させるとは、デザイン、設計能力だけでなく資金面、実現性、交渉能力等、複雑な要素を合わせて解決してゆく必要がある。そのような能力に長けていたのが、ジョンソンである。かれは、富豪の家に生まれ、ハーバード大学で学んでいる。

大学生の頃、すでに遺産を相続し資産家となっていたそうである。その後、ニューヨーク近代美術館でキュレーターをしている。そして、しばらくしてから建築家となっている。

ミースに憧れ、どうしても建築家になりたかったようである。シーグラムビルの設計では、当時アメリカの建築免許がなかったミースを助け、ジョンソンが名目上の役割を担ったそうだ。


元AT&Tビル(少し前までソニー・ビル)

ジョンソンは、70年代後半から80年代にかけてポストモダン建築の巨匠と云われた。ポストモダンとは、モダン=機能主義における単純化に飽き足らず、端的に云えば脱・機能主義および単純化を目指した。表層的には、歴史様式からの引用が多く、モダンに比較して装飾性があるのが特徴である。

ジョンソンの代表作である、ニューヨークにあるAT&Tビル(元ソニービル)では、最上部分にクラシックな飾りを思わせるデザインが施されている。

ヒューストンにあるリパブリック・センターでは、まるで中世のゴシック建築を思わせるような尖塔をデザインしている。その他、これでもかと云わんばかりに高層建築を建てまくっている。そうそう、あのトランプタワーもジョンソンの設計だそうである。


上/リップスティック・ビル  下/リパブリック・バンク・センター

80年代後半、ジョンソンは脱・構築主義建築を標榜する建築家たちのサポートをする。具体的には、これら建築家の展覧会を企画・開催した。脱・構築主義とは、端的に云えば、比対称建築のことである。要するに前後左右のバランスが違うことである。

それは既成概念から建築の自由性を獲得する手段でもあった。代表的な建築家は、フランク・ゲイリー、ザハ・ハディド(確か、新国立競技場を設計した?)など、現在ではみな巨匠の仲間入りも近い人たちである。

これは、近代美術館でキュレーターをしていた目利きジョンソンの面目躍如である。晩年は、5万7千坪と云われる自宅のなかに、実験的造形物やオブジェを造り、また現代美術の収集・整理などに時間を費やした。

現代美術の収集家としては、大変有名らしい。この自宅は、現在では一般に公開(予約制)されているようである。場所は、ニューヨーク・グランドセントラル駅から約1時間のニューケイナン駅の近くである。


ガラスの教会

<ニューヨーク/建築様式を読み解く>
ニューヨークの建築をテーマに、その象徴であるスカイスクレーパーからあまり知られていない珠玉の小建築までをあますところなく取り上げ、世界中で最も躍動的な都市であるニューヨークの豊かな建築言語を読み解く。

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