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■デザイン|日本の住宅 ジャパニーズ・スタイル

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日本には、かつて美しい町並みがあった


蔵造りの町並み 川越市

いまの日本の住宅は美しいか

アベノミクスのおかげかどうか知らないが、一部ではミニバブルの様相が見受けられるようである。それを背景に今後は不動産や住宅市場が活性化されるのか。それは神のみぞ知る事であり、個人的にはよく分からない。しかし、東京およびその近郊では戸建住宅、マンションの建築が勢いづいているようである。

住宅メーカーの消費増税前の駆け込み需要は、すでに一段落したと思うがどんなもんだろうか。それはさておき、日本の住宅のデザインを多くの人達は、どんな風に思っているのだろうか。個人的には、何か魅力に欠ける住宅ばかりと感じている次第である。機能的には、年々増してはいるのだろうが、それがもたらす効能ばかりが宣伝されている。

人がそこ(家)で暮らすことで満たされるであろう、心の豊かさに訴えかけてくるものがない。人は機能ばかりではなく、心を満たされることが重要だ。そのように考える次第である。もちろん、異論はあると思うが、何故、そう思うかと言えば「機能はいずれ古くなる」と思うからである。

日本の住宅は美しいか。「たぶん、美しくはない」はずである。町並みを見てみれば、それは一目瞭然である。違うか。海外から来た外人さんは、日本は美しいと言う方が多いが、それは住宅や町並みを指してはいない。ゴミが少なく清潔であることを意味する場合が多いはずである。あるいは、京都をはじめとした古都を指している。

海外には町並みが美しい場所が多く見受けられる。個人的には、その多くは映像や写真でしか見たことはない。それでも何故、それを美しいと感じるか。それは、「共通する美意識」が、建築にあるからに他ならない。一方、日本の町並みが貧相なのは、「美意識の欠如」に他ならないだろう。端的にいえばそのように感じる次第である。


蔵造りの町並み 川越市

日本は、時代に適合する新しい民家の創造に失敗した

かつて日本の町並みは美しかった。それは江戸時代に形成されたものであった。民家(商家、農家など庶民の住まい)が建ち並ぶ住宅街は、一定の考え(コンセプト)を基に建築されていた。たしか、そうである。封建時代だからこそできたと言えばそうかもしれないが、一定の美の形成には成功したはずである。

江戸時代に終止符を打った明治維新後、当時の政権は欧米の技術や考え方を導入することに血眼となった。そこで冷静に日本固有の美を考えていれば、現在のゴミタメのような町並みとはならなかったはずである。しかし、当時の政権や行政はそこまでの余裕がなかった。そして、はじめの掛け違いから一歩も抜け出す事ができないまま現在に至っている。それが、いまの日本の住宅、町並みの姿である。


蔵造りの町並み 川越市

日本の民家と町並み

民家とは、農家、商家(町家)、職人等の一般庶民の住まいのことである。

現在では、住まいを住宅という言葉で統一されている。しかし、建築史的には、住宅とは貴族、武士などの特権階級の住まいのことであり、一般庶民の住まいは、民家と区別されていたようである。つまり、「住宅」と「民家」は階級の違いで区別されていた。

民家には、「土間」という共生・共有の空間があった。

住宅と民家の違いは、住宅=床をもつ生活様式、民家=生活面が土間にあるという違いとなって表れていた。民家には、土間という外と内の中間地帯ともいうべき要素が特徴であった。農家の土間は、作業を行ったり炊事をしたりと多用途な空間であった。また商家の土間は商業空間として活用された。

商家(町家とも言う)の建ち並ぶ江戸の町並が、なぜ美しく思えるか。それには一定の約束事?があったようである。それが、美の効能を発揮したと思われる。それが、以下のような特徴である。

<江戸時代/商家の特徴>

1. 道路に面して直接出入り口を設ける。
2. 屋根は、瓦葺きの切妻造り。
3. 正面は開放的、格子構え。
4. 中2階建て、虫籠窓・連子窓を設ける。
5. 間口が狭く、奥行きが深い。
6. 表に店を構え、居間・座敷は奥にある。

他には、蔵造りもあるようである。その土地によって多少異なってはいたが、概ね上記のような基本となるものがあったようである。

現代では、町並みを形成する住宅(商家を含む民家)には、なんらお約束ごとはないようだ。いや。建ぺい率などお役所の定める事項は幾つもあるが、それは美とはなんら関係ないことである。そのことが、町に一定の美をもたらさない原因であると思われるが、如何に。

日本の民家をいまに造る住宅ブランド

日本の民家の精神性を受け継ぐ家を造る住宅ブランドがある。

いまから10年以上前に代官山の住宅展示場(旧山手通り沿い)で、「古民家風の住宅」を見た記憶がある。それは当時「ビッグフット」というブランドのものであったが、いまでは「BESS」というブランド名に変わっている。ログハウスなどの別荘住宅をメインとした住宅ブランドであるらしい。

ところで、「BESS」とはエリザベスの略なのか、たぶん違うとは思うが…なんの略なのか少し気にかかります。ちなみに会社の正式名称は、アールシーコアというらしい。なんと、ジャスダックに上場している。

それはさておき、このブランドはいまでも日本の民家の流れを有した住宅を造っている。それが以下の写真の家である、これは「ジャパネスクハウス」というものらしい。「程々の家」というキャッチフレーズはよく分からないが、このような家を造るハウスメーカーは、いまでは少ないのではないか。

この家の良し悪しには個人差がだいぶあると思うが、日本の民家の精神性を取り入れているのは間違いない。どことなく、落ち着いて寛げそうな雰囲気が漂っている。

ちなみに何故、このメーカーを取り上げたのかと言えば、11月頃にやたらとネットに広告が掲載されていたからである。程々見飽きたが、何故か記憶に残った次第であった。なお、これは宣伝に非ず。単に興味本位で取り上げたに過ぎません。あしからず。


ジャパネスクハウス BESSより


ジャパネスクハウス 広告「程々の家」

いまでも見られる、かつての日本の民家

現在の日本には、欧州のような歴史ある町並みは残されていない。それでも幾つかの民家をはじめとした建築遺産ともいうべきものが、残されて保存されている。その場所を以下に紹介したいと思います。

<民家および建築遺産保存の施設(ほんの一部)>

北海道開拓の村(北海道・札幌市)
http://www.kaitaku.or.jp/
みちのく民族村(岩手・北上市)
福島市民家園(福島・福島市)
http://minka-en.com/
江戸東京たてもの園(東京・小金井市)
http://tatemonoen.jp/
府中市郷土の森博物館(東京・府中市)
http://www.fuchu-cpf.or.jp/museum/
日本民家園(神奈川・川崎市)
http://www.nihonminkaen.jp/
博物館明治村(愛知・犬山市)
http://www.meijimura.com/

以下は、参考文献とした「民家と町並み」という書籍!
旅立つ心が知識を求めて…。歴史を探る。文化財を訪ねる。文化財探訪の旅へのいざない。

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