なぜ1994年か、それはとくに意味はありません
流行とは、鵺(ぬえ)のようなもの…。実態はなく、追いかけると逃げていく。
「時の流れに身を任せて幾年月、思えば遠くに来たもんだ」などと時代の変化を例えますが、「時代の背景は変わり、時は流れても、それでも変わらないものもある」のは、間違いないと思われます。
時は流れても、変わらない「モノ・コト」などを、松尾芭蕉は「不易」として表しました。流行に関して何かを探すことは、別の意味でいえば「不易」を探ることと同義であると考えられます。逆もまた真なりと言うように…。
「不易」=(いつまでも変わらないこと)
現在の流行は、本当に新しいか否か!
2016年現在の流行は、本当に新しいものなのか。時間軸でいえば確かにそうであるが、その中身を対象とした場合、はたしてどうだろうか。
平成生まれの若い人たちは、過去を知らずに、いまの流行こそ最新として捉えているはずである。違うだろうか。しかし、流行も時代の流れとは無縁ではなく、流行り廃りの歴史が脈々と受け継がれて「いまの流行」がある。
例えば、きゃりーぱみゅぱみゅ(もう古いか)など、流行の先端とされていましたが、当方などはなぜか懐かしい想いがしていました。音楽ではなく、そのビジュアルがかつてどこかで見たことがあったからです。
最新の流行にも、実は案外ルーツが存在しています。
若い人たちは、簡単に「昭和をダサい」とかいいますが、上記を考慮すると逆にダサいと思われますが、違うでしょうか。現在の流行は最新と信じるのは、実はルーツを知らない無知故に陥った大きな勘違いである、といえるでしょう。
90年代以降に大きな技術革新があったのは事実ですが、それによって何がどう違ったか。そのルーツを辿れば、実は案外変わってないかもしれません。
インターネットが世の中に浸透し始めた90年代後半以降と、それ以前では生活者の意識・価値観に、ある程度の線引きができると思われます。
90年代後半以降、インターネット、ハイブリッドや電気自動車、スマートフォン、4Kテレビなどが浸透してきました。ネットワークは充実し、省エネルギー化と高感度化は進展し、生活は一層便利になりました。
しかし、それで生活が充実化したかといえば、なんとなく疑問を感じざるを得ません。それは、なぜなのか。それを探るのが、この「流行に関する一考察」の目的でもある、と言っても間違いではありません。
大層なことではあるが、個人的に最近の流行事象に、どーにも「刹那的」だという想いがしていて、それはどーしてかを探ってみたいからでもあります。
なお、その答えはここにはありません。
あくまで仮説ですが、流行事象の理由(答え)は曖昧模糊として霧の中に消えていき、そして残るのは「不易」という存在であると思われます。判ったような、そうではないようは仮説ですが、いまのところそれ以上のものはないです。
せつな【刹那】きわめて短い時間。瞬間。念。
インターネット前夜、1994年のトレンドを顧みる
なぜ、1994年かといえば、とくに理由はありません。本棚の奥に「1994年のトレンド」を紹介した本があったからに他なりません。
しかし、その本をぱらぱらと見ていてある事実に気がつきました。それは、この時代はまだインターネットどころか、パソコンもまだ十分に浸透していなかった。なにしろ、ウィンドウズ95が発売されるのは翌年のことです。
インターネット前夜どころか、パソコン前夜と言っても間違いはない。
1994年、これは面白いかもしれない。そう思ってこのように取り上げている次第です。なお、何が面白いかは個人差があるので一概には言えませんが。
「トレンドを読む/1994年上巻」ツタガワ&アソシエーツ著
著者は、流通小売のコンサルタントのようです。とくにニューヨークの事情に詳しく、この本ではニューヨークスタイルとサブタイトルにあります。
以下に紹介する内容は、上記の本を参考に1994年の流行事象を要約したものとなっています。なお、参考がニューヨークスタイルにあるので、最後に日本の当時の事情も紹介したいと考えます。
1994年のトレンド(ニューヨークスタイル)
ラルフ・ローレン 1994年 ヴィンテージキャンペーン
「トレンドを読む」で紹介されているトレンドは、以下のように分類がされています。
<トレンド分類>
トレンドは、「ニューライフスタイル」「時代性」「価値観」「美意識」「デザイン」「ニューコンセプト」「ホット!ホット!」に分類されています。
1994年のトレンド・キーワード
1994年のトレンド全体の傾向を要約したものです。
1)共存および共生の思考が静かに広がっている
それは、80年代のヤッピー文化の反動の表れのようです。ヤッピーとは、ウォール街を中心としたお金がもたらす豊かさを享受する志向性にありました。当然のように自己中心的であったのは言うまでもありません。
2)エコロジー意識は高まり、自然に対する関心が強くなっている
エコロジー意識とは、地球を再認識すると同義と思われます。この志向性は、この頃から始まり、そして現在でも続いています。
3)何かを創る喜びが生命を活性化させる
何かを創作することでストレスを発散させるニーズが高まっている。それは社会背景が影響しているのは言うまでもない。精神的な豊かさを求めて料理、キルト、ジュエリー、園芸などの趣味的行動が注目されている。
4)世の中のすべての商品が新しさという活力を失っている
80年代の虚飾への反動から、シンプルで実用的なモノという流れのなかで新しい商品が生まれなくなっている。「このデザイン、この品質で、この価格!」というグレートバリューが求められる。
5)虚飾ではなく、より実質的な価値の提供へ
表層の虚飾を捨てて、より中身を充実させることで、実質的に顧客の満足度を向上させる商品とサービスを提供していく。
<キーワードまとめ>
1994年のトレンドの方向性は、なんとなくいまでも通じるものがある。「共生と共存」は、いまでは重要な課題となっている。欧米では難民問題があり、日本では少子高齢化が問題となっている。また、繋がりたいという志向性は、いま最も旬なトレンドと言っても過言ではない。
「エコロジー意識」は、この頃からずーとテーマとなってきている。自然というキーワードは、いまでも消費者を刺激してやまない。
「創る喜び」に関しては、もう定着しているか。料理教室なんて、いまでは男も通っているぐらいである。これからはネットを通じて行うのが、主流となるかもしれない。もしかしたら、すでにそうなっているかもしれない。
「商品から新しさが失われている」と「実質的価値」は一見すると相反しているが、それが時代の流行というものの背景を表している。また、それは80年代後遺症とも言えるに違いない。
それにしても、20年以上も前のトレンドとは思えないがいかに。技術は進化したが、人間の意識・価値観はそんなに変わってないような、それは気のせいか。
次は、トレンド分類の中から幾つか選んで紹介していきます。
冒頭動画:篠原涼子 恋しさとせつなさと心強さと(1994年)
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