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■時代と流行|レトロフューチャー 懐古的未来世界を探訪する

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懐かしい未来とは、此れいかに

その世界観は、人間的であり有機的でもある?

懐かしい未来は、何故か人を魅了して止まない

「レトロフューチャー(retro-future)」を知ったのは、たぶん70年代だと思うが確かではない。しかし、それをはっきりと認識したのは、映画「ブレードランナー(1982)」によってだと思う。これは間違いない。「スターウォーズ(1977)」は既に観ていたが、そのときはまだ認識するには至っていなかった。

これはあとで知ったことであるが、「ブレードランナー」の懐古的未来世界は本来のレトロフューチャーの意味合いとは若干違っていたようだ。何故なら、本来のレトロフューチャーは、20世紀前半期に考えられた未来世界への憧憬や郷愁であり、どちらかといえば明るい未来世界を指していた。

「ブレードランナー」は、その世界観に明るさは無いに等しい。どこまでも暗いと言ってもいいかも。そして、混沌としたその世界では、中東やアジア、そして西洋が混じり合ったなんとも猥雑な光景が繰り広げられていた。

しかし、その混沌とした猥雑な近未来世界がもたらす魅力は、これまでに観たことのない世界観であった。当時は大変な衝撃を受けた記憶がある。そこではじめてレトロフューチャーに興味を持ったのであった。その結果、この世界観は「サイバーパンク」や「スチームパンク」に近いことを知った。

サイバーパンクもスチームパンクもレトロフューチャーから派生したものである。したがって、その意味合いも時代の変化とともに変容したのかもしれない。それは、人々がかつて思い描いた未来像が現実化するにあたり、何かが違うと気が付いた結果ではないかと思われる。いまや、レトロフューチャーは懐疑的未来と言い換えてもいいかもしれない。

<レトロフューチャー>
19世紀後半から20世紀前半期までに考えられた懐古趣味的であり、郷愁を誘う未来世界のこと。端的には、懐古的未来世界という。

<サイバーパンク>
コンピューターと人間の関係式を扱った未来世界が特徴となっている。そこでは、主に人間はコンピューターに支配される世界が描かれている。どちらかというと反体制的な主張がされる場合が多い。

<スチームパンク>
SFのジャンルのひとつであり、サイバーパンクをもじって付けられた。主に英国のヴィクリア朝期の機械文明に触発された世界観が特徴である。蒸気機関が主なエネルギー源として使われることから、その名前の由来となっている。

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レトロフューチャーを代表する形状のロケット(ウィキペディアより)

レトロフューチャーを堪能する

懐古的未来世界は、かつては明るく、現在は懐疑的に描かれる

かつて未来世界はどこまでも明るいという設定で描かれることが多かった。それは、空を飛ぶ自動車や未来の都市像として表現された。しかし、時代がだんだんと現在に近づいてくるに従って未来の世界観は、何故か暗い様相を示してくる。それは何故か?。

20世紀前半期の創造者たちは、遠い未来により健全な世界を想い描いていた。原子力やコンピューターがもたらす現実までは想像できなかったのではないか。いや、そうであってほしいという願いを込めたのかもしれない。

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2000年のパリの人々がオペラを後にして空中旅行をするという未来予想図。アルベール・ロビダ、1902年頃。(ウィキペディアより)

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未来都市(2010)の想像図

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50年代アメリカでは、何故かテールフィンを付けた自動車が流行った、それは空を飛ぶ自動車を想起させる疑似未来体験でもあった。

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ドイツ人アーティスト、voitv氏がスチームパンクをテーマに描いたレトロフューチャーなイラスト

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映画「ブレードランナー」の近未来世界 空飛ぶ自動車が見える(冒頭画像もおなじく)

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スチームパンク風にデザインされたパリ・メトロの11番線ホーム

レトロフューチャーが注目されたのは、80年代だった。もちろん、それ以前からあったのは言うまでもないが、やはり映画「ブレードランナー」の世界観がきっかけになっていた。80年前後にサイバーパンク、さらにスチームパンクと続き。そして「ブレードランナー」が誕生したように思われます。

最近、アップルウォッチが発売されたが、当方は何か昔にあったような気がした。それは、子供のころに見たオジさんの時計のようだった。もしかしたら、これもレトロフューチャーを意識したデザインなのかもしれない。

それは気のせいかもしれないが、そんなことを思いました。

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アップルウォッチ 2015

サイバーパンク・アメリカ (KEISO BOOKS)
80年代電脳文学のドキュメント。世紀末SFが映し出すニューロマンティックな〈現在〉。

ブレードランナー ファイナル・カット製作25周年記念エディション

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