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■時代と流行|四都市物語 その2 ベルリン

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都市の徒花、アンダーワールド

映画「嘆きの天使」のなかで、キャバレーの踊り子を演じたマルレーネ・ディートリヒ。100萬弗の脚線美と謳われた!

第一次世界大戦後、ベルリンはヨーロッパの歓楽の首都と云われたようである。戦争に破れた挫折感と、ヒトラー登場までのわずかな時間に花開いたワイマール文化の徒花が、夜のベルリンが魅せるアンダーワールドであった。

現在でこそベルリンはひとつとなっているが、約20年ほど前までは東西に分断されていた。当時、ブランデンブルグ門を境界に東西を隔てた壁があった。そこから、そう遠くないところにフリードリヒ・シュトラッセという地区があるようだ。その地区の東側にあたる裏通りこそが、アンダーワールドの入り口であったようである。

1920年代のベルリン

1920年代のフリードリヒ・シュトラッセでは、ありとあらゆる快楽が揃っていたようである。秘密クラブで行われるセックスショー、酒、煙草、麻薬、女、金さえだせば何でも快楽を買える都市のアンダーワールドであったようだ。毎夜の如く、この街では猥雑で、欲望に満ちた行為が繰り広げられていたのである。

ベルリンは、20世紀初頭から30年代はじめにかけて急激に人口が増加したようである。1900年頃の人口が約200万人に対し、1930年頃では400万人を超えていたそうである。このような人口増加を背景に、都市生活者は窮屈な生活を強いられていたのである。さらに、それは敗戦による挫折感と同時に、モラルの破壊を招きデカダンな気分を蔓延させたのである。そして快楽の追求へと繋がったのである。

ベルリンのカフェ―黄金の1920年代
ベルリンのカフェ―黄金の1920年代

ベルリンのキャバレー

この時代を映像化したものに、ライザ・ミネリ主演の「キャバレー」がある。しかし、当時の状況に詳しい人に云わせるとあれはキャバレーでなくナイトクラブであるらしい。キャバレーというのは、MCと呼ばれる司会者こそが中心なんだそうである。映画「キャバレー」でもオカマかゲイか知れない白塗りの化粧をした司会者が、グロテスクな表情で独特の雰囲気を漂わせていた。

この頃のキャバレーは、かつての演芸中心から女性の性的魅力を前面に出したショーが中心となっていた。また、ベルリンではパリの洗練に対し猥雑をもって特徴としたようである。それは、ゲイによるショーである。この女装したゲイによるダンスやショーは独特の退廃的デカダンな雰囲気を助長させたようである。女性の性的魅力とゲイによる退廃的雰囲気、これこそがベルリンのキャバレーの特徴であった。

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キャバレーと芸術家

アバンギャルド芸術の活動体であるダダというものがある。このダダに属していた芸術家の多くが、キャバレーを活動の場としていたらしい。かれらは、スクエアな人々を挑発する活動をしていた。そのためにはキャバレーという猥褻でスキャンダラスな場所が適合したのだそうだ。また、彼ら自身もゲイであったりしている。

既成概念から自由になることを標榜した芸術家は、自らもアンダーワールドの住人となることで、その自由を手に入れようとしたのかも知れない。しかし、この自由も束の間のことであった。やがてヒトラーという怪物の登場によってアンダーワールドは駆逐されてしまうのであった。

参考文献:四都市物語 海野宏著


ベルリン・ポツダム広場1920年代

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