昭和モダンの傑作 スクラップ&ビルドの犠牲になるか
セイブ・ザ・オークラは、はたして成るか
■海外セレブから愛されたオークラの美
和洋折衷?の昭和モダン様式の傑作として名高いホテルオークラ東京の解体が迫っている。2015年8月末に閉館し、その後は解体されるそうだ。2020年の東京オリンピックを見据えた建て替えであるのは間違いない。なんせ、戦後の日本は何かあるとスクラップ&ビルドを得意としてきた。
そのせいで、いまや昔の面影を残す歴史的建造物は残り少なくなっている。ライト設計の帝国ホテルはずーと前に解体されていまはない。どこのホテルも高層ビルの一部と成り果てているのが現状である。
日本ではそれが当たり前であるが、ひとたび海外に目を向ければ歴史の面影をいまに残すホテルはざらにある。しかも、それらはいまでも高級ホテルとしての存在感を有している。海外で名門といわれるホテルほどそういうものと思われる。
現在、2015年8月以後の解体を目前にして、オークラを愛する海外セレブを中心に「セイブ・ザ・オークラ」の動きが顕著となっている。はたして、その成果はいかに。今後の動向が注目される。
「Save the Okura(オークラを守れ)」では署名活動を行っています。以下のリンク先をご参照ください。
http://savetheokura.com/
<ホテルオークラ東京概要>
・大倉喜七郎(大倉財閥二代目)によって設立された。
・1962年、東京オリンピック(1964年)を前にして現本館が開業する。
・1973年には、別館が開業する。
・理念とコンセプト…「日本の美を以って諸外国の貴賓を迎えるホテル」という創業者の理念と、「帝国ホテルを超えるホテル」という意気込みをコンセプトにした。ちなみに創業者は、戦後の公職追放で帝国ホテルを追い出されている。
・設計、インテリア…建築家の谷口吉郎を筆頭に当時の建築デザイン、美術工芸の第一人者を集めて造られた。日本の美とモダンが結合した傑作として名高い。
本館正面玄関、傾斜地のため地上5階に相当する 写真:ja.wikipedia.org
オークラの創業者は、日本の美に強いこだわりがあったようだ。その熱い想いが、建築家や工芸家を動かし、見事な形態となって表現されている。これはある意味では、昭和の高度経済成長期ならではの奇跡と言っても過言ではない。いまの時代にこれと同じ試みをした場合は莫大な費用が必要となるに違いない。
また、戦後に行われたモダン様式と日本の美の融合を代表するものとして、歴史と文化の観点からも後世に残す価値あるものと思われる。
ホテルオークラ東京本館建て替え計画に海外から惜しむ声続々(ライブドア)
トーマス・マイヤーが廻る、日本近代建築
Save Japan’s Modern Architecture – Tomas Maier in Japan
オークラの昭和モダンは、海外で人気が高い
「オークラ・ランターン」の名で親しまれる切子玉を重ねたような灯具
■もしかして、かつての浮世絵などと同じ轍を踏むかもしれない!
ホテルオークラは、実に多くの海外著名人に愛されているようだ。これは、創業者である大倉喜七郎氏が望んだとおりであり、嬉しく思っていたことだろう。そのオークラが解体されることに、海外著名人は納得がいかないようだ。
高級ブランド「ボッテガ・ヴェネタ」のクリエイティブ・ディレクター、トーマス・マイヤー氏は、具体的に署名活動や以下のプロジェクトまで始めている。
「ボッテガ・ヴェネタ #MyMomentAtOkura」
ホテルオークラの価値を再認識し、それを広めるプロジェクト。誰でも参加できるようである。詳しくは上のリンク先をご参照ください。
また、デザイナーのポール・スミス氏やマーガレット・ハウエル氏も、「カーサブルータス」サイトの特設ページで保存を願うメッセージを寄せている。(他にも多くの著名人のメッセージがあります)
なくならないで、私のオークラ! MY MOMENT AT OKURA(カーサブルータス)
海外メディアも多くがオークラ建て替えをニュースとして取り上げている。なかでもワシントンポスト紙(電子版)では、「この国の“取り壊し”文化の最新犠牲者」であるとして批判している。
日本国内より海外からの反応が高いように思うがいかに。なんだか、日本人は、昔の悪いくせがまだ直っていないのかもしれない。かつて、浮世絵などの日本美は如何わしいとして尊重されず、海外の高い評価によって見直された。
それと同じことが、また繰り返されそうな予感である。
いったいいつになったら、この国の“取り壊し”文化は見直されるのだろうか。
新国立競技場の迷走もそうであるが、オリンピック誘致の功罪が問われるのもそう遠く無いことかもしれない。なんてことを思う昨今である。
冒頭写真:casabrutus.com
モダンデザインに和の意匠や素材を取り入れた空間を象徴するメインロビー
写真:architecturaldigest.com
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