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時代と流行|詐欺の系譜 社会を蝕む違法収奪のシステム

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なぜ、人々は騙されるのか

時代は変われども、連綿と続く人を騙すという行為は永遠不滅なのか

 2020年現在、オレオレ詐欺(振り込め詐欺)は相変わらず続いている。社会的にも十分周知されているはずだが、騙される人が後を絶たない。

 人を騙すという行為は、人の情や好意を逆手に取ることに他ならない。そして騙した方は勝ち組となり、騙された方は負け組とされる、それが現代である。実に品がなく、倫理なき時代になったと思わざるを得ない。

 例として、オレオレ詐欺集団の上層部は、数億円以上を蓄えて、高級ブランド服を着て、高級車を乗り回し、夜はキャバクラやクラブなどで散財しているそうだ。一方、騙された被害者にお金が返還されたことは、ほぼ皆無である。

詐欺というウイルスが蔓延する
 詐欺そのものは古くからこの世にあるが、日本では2000年代以降から、より目立って多くなってきたように思われる。その背景には、バブル崩壊後のデフレ不況や、止むことなく続く企業のリストラなどが関係あるのではないか。

 そして企業は、短期的利益を追求するのが当たり前となり、そのためには不正も厭わなくなった。とにかく、その場をしのげればいいとばかりに、優良といわれた大企業でさえも詐欺的行為を平気でやるようになってきた。

 もはや、社会全体が詐欺的行為に毒されている、と言っても過言ではない。

 詐欺のよくある手口に、あなたに特別な好意として「必らず儲かる方法」を教えます、というものがある。そこでは、善意や好意という無下にできない巧妙な仕掛けが施されていて、やさしい人ほど拒否ができずに騙される、

 古くて新しい詐欺の手法は、ネットの時代となりさらに拡大してきた。無料のはずなのに高額な請求がくる「課金詐欺」や、アダルトサイトから高額請求される「ワンクリック詐欺」など、その他無数の広がりを見せている。

 詐欺の手口は、ネットという新しいツールに見事な適応性を見せている。大企業の適応能力と比べて、格段に詐欺の手口の方が上回っている。

 ネットには、ステルスマーケティング(偽装広告)などの詐欺的といえる行為を含めれば、その手法は無数にあり把握もしずらい状況にある。

欲望を刺激し、悩みに付け入る
「お金儲け」という人の欲望をもっとも刺激する詐欺は、いつの時代も蔓延っている。2000年前後のネットバブル以後、勝ち組負け組とかいわれるようになり、お金をいかに楽して儲けるかをネタにした詐欺の手口が広がってきた。

「投資金詐欺」は、とある会社(実体はない)に投資すると高額配当がある、という手口で広がった。「情報商材詐欺」では、金儲けのカリスマ(自称)が、自身の成功体験を語り、その手法を商材として高額販売するというものだ。

 ちなみに情報商材詐欺の被害額は、2017年で約200億円となっている。

 詐欺の手口は、人の欲望だけでなく、人の悩みやコンプレックスにも入り込んでいる。そして「自己啓発セミナー」や「スプリチュアル」を装って、人にそっと近づいて取り込んでいくのだ。そこでは、「洗脳」という手法が使われている。

 洗脳とは、「人から考える力を奪う」ことと同義である。洗脳されると他人の言うことなど、もはや聞く耳をもたなくなる。これが詐欺師の思う壺である。

 さらにいえば、カルト宗教も詐欺の一種と考えられるだろう。なぜならば、カリスマ(自称)は贅を尽くし、信者には苦行とお布施(お金)を強要するからだ。

 また、ある意味では、政府や官僚をはじめとした国のシステムも、詐欺的行為とおなじ穴のムジナかもしれない。例えば、パチンコはギャンブルではないとはいかに。他にも似たような事例はたくさんある。(消費税然り)

 お上(国家)による法律、法令という名の、めくらましを食わされた国民は、ただ黙って従うしかない。時代は変われども、詐欺が連綿と続くのは、ある意味ではそのあたりに要因があるのかもしれない。


引用:https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_soc_tyosa-jikenfurikome

<詐欺の種類(一部)>

商取引詐欺(企業がターゲットの詐欺)
取り込み詐欺
融資金詐欺(M資金詐欺)
小切手詐欺、など

特殊詐欺(不特定の人物に通信手段を活用した詐欺)
振り込め詐欺(オレオレ詐欺)
還付金詐欺
架空請求詐欺
融資保証金詐欺、など

人心掌握詐欺(人の情、信仰心や欲望に付け入る詐欺)
催眠商法(自己啓発詐欺、カルト宗教)
結婚詐欺
資格商法
霊感商法(スプリチュアル)
募金詐欺、など

なりすまし詐欺(思い込みや思い違いを利用した詐欺)
かたり詐欺
ワンクリック契約
マイナンバー詐欺
偽装サポート詐欺
指紋認証詐欺、など

有価証券、出資法、手数料、不動産などの詐欺
保険金詐欺
チケット詐欺
クレジットカード詐欺
フィッシング詐欺
投資詐欺、
情報商材詐欺
通貨詐欺
債権回収詐欺
ポンジ・スキーム
地面師、など

戦後の闇から誕生したM資金


画像引用:https://hobbycom.jp/my/7bcfff6171/photo/products/86513

M資金詐欺=キング・オブ・サギ

 1945年、太平洋戦争に敗れた日本は、多くの都市が焼け野原となった。一方終戦後、旧日本軍が秘匿していた物資(金塊、貴金属等)が多く残されていた。

 それらの物資は、現在の貨幣価値で2兆円を超えたといわれる。その物資は秘密裏にある金融機関に預けられて、やがて途方もない金額に膨れ上がっていた。そして、その資金は「M資金」といわれるようになった。

 M資金のMは、GHQ(連合国軍最高司令部)のマーカット少将の頭文字といわれる。なお、このM資金が本当に存在するのか、その信憑性は定かではない。

 とにかく、この「M資金」をネタにした詐欺行為が、復興著しくなった戦後日本を舞台に繰り広げられたのだ。主に企業の経営者がターゲットにされた。

 M資金は、とある機密機関に管理されていて、その機関の審査で選ばれたものだけが、低利かつ長期にわたる多額の資金が借りられるとされた。融資される金額は、少なくとも数百億円、多ければ数十兆円も可能といわれた。

 しかし、言うまでもなく詐欺であるから、ある手口が施されていた。審査の手数料という名目で、一億円ぐらいを徴収される。その後さらに、活動資金とか、その他名目で、さらに一億、二億と、なんども徴収される仕組みになっていた。

 大企業の経営者などは、融資金額が数百億円であれば、手数料などの一億や二億は安いもんだ、とばかりにまんまと騙されたそうだ。

 1970年代、このM資金詐欺に見事にしてやられたのが、全日空の当時の社長だった。しかし、この事件にはその後尾ひれがついて、ロッキード事件(1976年)との関わりが指摘された。(ロッキード社が、政財界に賄賂を渡していた)

 当時、全日空は新しい航空機の導入先をダグラス社に決めていた。しかし、アメリカ(ニクソン大統領)は、ロッキード社を押していた。そこで全日空の社長の追い落としが仕掛けられた、という説が浮上した。

 全日空社長は、その後退陣し、導入される航空機はロッキード社に変更された。なんとも手の込んだ詐欺である、しかしその後、事件化して政治家(当時首相、田中角栄)や闇の紳士たちが逮捕されて、いずれも一線から引きずり降ろされた。

 ちなみにロッキード事件の本当の目的は、首相の田中角栄を追い落とすことにあったと、現在ではまことしやかに語られている。

 M資金詐欺は、この事件の関わりで格が上がり詐欺の王様と呼ばれるまでになった。これは現在でもおなじである。

 ちなみに、M資金にやられたのは全日空だけではない。その他の企業では、丸善石油、富士製鉄、明電舎などが事件化している。

 さすがに、2020年の昨今では、M資金詐欺は鳴りを潜めたが、その手口は「融資詐欺」や「投資詐欺」に形を変えて続いているようだ。

 このM資金詐欺は、現在でも詐欺の王様と称されている。

 なぜなら、その舞台背景の大きさ(旧日本軍の秘匿物資)、登場人物の多彩さ(政治家、元皇族、闇の紳士など)、巨額な融資資金(数百億円〜数十兆円という途方のなさ)などがあるからだ。

 そして、詐欺ではあるが、なぜか品格があるとされる。なお繰り返すが、あくまで詐欺であり、犯罪であるのは言うまでもない。

ネズミ講とマルチ商法

ネズミ講の大流行と破綻

 かつて一世を風靡した詐欺に「天下一家の会」というものがあった。70年代に大流行したが、やがてその無限連鎖のシステムは「ネズミ講」と呼ばれるようになった。そして79年、これを取り締まる法律が制定された。

 ネズミ講は、古くからある無尽講の仕組みを活用した新しい相互扶助のシステムとして誕生した。この会には、誰でも参加することができた。参加システムは、掛け金の多寡によって分類されていた。

 具体的には「親(講元)がいて、親が二人の子(会員)をつくる。さらに子がそれぞれ孫二人をつくる。孫は、それぞれひ孫二人をつくる」という無限連鎖が続いていく。多産で知られるネズミに例えて「ネズミ講」と呼ばれるようになった。

 補足すると、子や孫になるには、当然お金(会費)を支払う必要がある。そのお金は、親をはじめシステムの上位者に分割して渡されるシステムだ。

講(こう)とは
同一の信仰を持つ人々による結社である。ただし、無尽講など相互扶助団体の名称に転用されるなど、「講」という名称で呼ばれる対象は多岐に渡っている。

 当然ながら、子や孫などを多く持つ親(講元)が一番儲かるシステムである。創立者をはじめ、会設立時の会員は大儲けしたが、そのあとの会員はたんに上位者の利益のために集められたと言っても過言ではない。

 日本の人口には限りがあり、無限連鎖は続くはずもなく、いつかは破綻するのが必然であった。それでも、楽してお金儲けをしたい人々の欲望を刺激して広がり続けた。しかし、やがて配当金は滞り社会問題化した。

 そして79年、これを取り締まる「無限連鎖講の防止に関する法律」が制定された。82年、脱税で逮捕されていた創立者の内村健一に有罪が確定した。

 無限連鎖と講を結びつけた内村健一は、詐欺システムの天才といわれた。その後、このネズミ講から派生した詐欺は、ひとつの潮流となり、ネット時代の現在でも形を変えて続いている。ある意味、ネットとは親和性があるようである。

マルチ商法は人を狩る

 マルチ商法を端的にいえば、ネズミ講に商品を介在させたものである。

 ネズミ講は、直接お金を支払うシステムだったが、マルチ商法は、本部(親)から会員(子)が商品を購入し、それを新しい会員(孫)に売るというシステムである。したがって、本部(親)が大儲けする仕組みもネズミ講とおなじである。

 このマルチ商法は、1970年代初頭にアメリカから導入された。正式には「マルチレベルマーケティング・プラン」というそうだ。

 ちなみに当時のアメリカでは、不当な取引方法として制限が課されていた。それに伴い、新しい活動の場として日本上陸をしたといわれている。

 マルチ商法は、ピラミッド型の組織であり、本部は下のA会員に商品を売れと尻をたたき、そのA会員はさらに下のB会員に、B会員はさらにに下のC会員に、という具合に下層に向けて連鎖的に「なんとしてでも売れ」と指示を出していく。

「なんとしてでも売れ」という仕組みは、嘘も方便、騙してでも売ることに繋がる。それは別の意味では、「人を狩る」ことと同義である。

 マルチ商法は、お金のために「人を狩る」のである、これこそ詐欺の本領といえるだろう。そして現在でも、狩られたカモ(人)を食い続けている。

 マルチ商法には、人を狩るシステムがマニュアル化されている。マルチ商法の説明会(会員獲得および既存会員の意識向上を図る)では、優秀会員(サクラ)が壇上にあがり、莫大な利益を上げたとして表彰されたりする。

 それを見た既存会員は、やる気を出して商品を売るぞ(人を狩る)となり、さらには、新しく会員になろうとする人が出てきたりする。

 頑張ればあなたもお金持ちになれる、という人の欲望を刺激することにマルチ商法は実に長けている、と言わざるをえない。

 このようなシステムを基本に、マルチ商法は現在もどこかで活動している。

カルト宗教とスピリチュアル

カルトは信者を救わない

 カルト宗教の定義を端的にいえば、トップ(教祖)が利益を独占し、信者には苦行とお布施を強要する宗教団体である。

 なぜカルト宗教では、信者に苦行やお布施を強要できるかといえば、それは洗脳によるものである。洗脳により、信者は「自分で考える力」を奪われてしまい、教祖の教えに従うことが、信者の目的となってしまう。

 洗脳の恐ろしいところは、他人の言うことに聞く耳を持たなくなることだ。教祖の教えこそ至上の高みであり、それを超えるものはこの世にはなく、さらには世界を救うのは教祖である、とまで思い込まされる。

 教祖や上層部にとって洗脳された信者ほど都合のいい人間はいない。どんなに無茶なことを指示しても、それを教義として捉えてくれるからだ。

 そして、信者は資産を剥奪された上に両親、親類、知人とも関係を断たれて、カルト宗教の本部によりかかって生きるしかなくなる。

 端から見ると、こんな恐ろしいことはないと思うが、信者は洗脳されているから、そうは思わないようだ。

 洗脳のやり方には、1)他者との関係性を絶たせる、2)一定期間狭い空間に閉じ込める、3)その上で特定の考え方を繰り返し教え込む、というものがあるようだ。そうすると徐々に自分の頭で考えなくなるという。

 ちなみにマルチ商法なども、上記したやり方を踏襲しているようである。

 洗脳は、ある意味で詐欺の根底ともいえるようだ。「人を信じ込ませる」こと、それが詐欺の目的であるからだ。

洗脳とマインドコントロール
洗脳は、強制力を用いて、ある人の思想や主義を、根本的に変えさせること。
マインドコントロール
自分の精神状態を制御すること。また、他人の精神状態を、暗示をかけるなどして支配すること。

スピリチュアルとまやかし

 一般的には怪しいと思うが、それにハマってしまう人が絶たないのが、スピリチュアルといわれる、霊的、または精神世界などの教えである。

スピリチュアルとは
霊的であること、超自然的なこと、精神性などを意味している。

 スピリチュアル系といわれる団体が、昨今では盛んなようです。そこでは霊能者や占い師を自称する人物などが、参加費として1万円ぐらいを徴収し、自分の体験や能力を語り、参加者に特別な能力を伝授するというそうです。

 たんなる勉強会であればいいですが、なかにはカルト的団体もあるようであり、十分気をつけた方がいいでしょう。

 このスピリチュアルの考え方は、多様な方面に取り入れられています。ポジティブシンキング、癒やしのヒーリング、アロマセラピー、心理カウンセリング、ボディトリートメント、整体や鍼灸などにも広がっています。

 したがって、意外な場所からスピリチュアルにハマってしまう場合もあります。怪しい、カルト的な団体を避ける意味で以下のような部分に気をつけましょう。

1)お金の話がでたら要注意です。
2)話が最初と違っている、何らかの嘘が含まれている。
3)「これは誰にも言ってはいけない」と秘密を守らせようとする。

参考:紀藤正樹弁護士、「カルトはすぐ隣に」より

参考文献:
「カルトはすぐ隣に」江川紹子 岩波ジュニア新書
「詐欺師たちの殺し文句」日向子暁 主婦の友新書
「詐欺の帝王」溝口敦 文藝春秋

詐欺師たちの殺し文句 日向子暁

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