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■社会|モスバーガーの非効率化 マクドナルドのプロ経営者を下すか

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顧客ニーズへの対応と効率化経営の戦い

 日本マクドナルドは、経営の根幹をなす顧客の支持を失ったまま、再び上昇する気配は見られない。本国アメリカでは、日本ほど酷くないようだが、ブランド価値が低下しているのは一緒のようである。

 マクドナルドのような、出店数の多さと、それに伴う大量消費で最大利益を出すというファストフード業では、合理化や効率化をいかに進めるかが求められてきた。運営ではマニュアル化が進められて、効率化の向上を図ってきた。

 しかし、時代は変わり、顧客のニーズも変化した。そこでは、かつての顧客とおなじ目線でサービスを提供しても通じなくなっている。いまや、食に対する企業の基本姿勢が問われるようになっている。

モスバーガー、不振のマックを尻目に好調を維持する

 マクドナルドは、度重なる不祥事と、経営方針の揺らぎなどが重なって売り上げを大きく減少させている。それに対し、日本発のハンバーガー・チェーン「モスバーガー」は、地道に売上高および営業利益を増やしている。

「味と品質にこだわりすぎの」モス、マックを蹴散らす非効率経営の秘密
 モスフードサービスは5月12日、2016年3月期決算を発表した。それによると、モスバーガー事業の売上高は前年同期比7.6%増の669億3700万円、本業の儲けを示す営業利益が74.5%増の59億1500万円となっており、好調だ。

 モスバーガーは、商品の作り置きはしていない。顧客から注文を受けてから商品を作ることを頑なに続けてきている。それは、あくまで安心・安全でおいしい食を提供するという企業の方針に他ならない。

 一方のマクドナルドは、最大利益の追求を目指したと思われる。とにかく合理化、効率化をして、いかに多くの商品を顧客に販売するかを目標としていた。食に対する姿勢が、モスバーガーとは対極にあったと言っていいだろう。

 それを端的にいえば、マクドナルドは、スピード=効率化であり、モスバーガーは、手間ひまをかける=非効率化である、といえるだろう。

 モスバーガーが、こだわるのは顧客の食に対するニーズに他ならない。そのなかでスピードの提供よりも、「おいしさ」という当たり前のことを、安全かつ着実に提供することを選択したと思われる。

 マクドナルドとおなじ土壌で勝負しても、資本力で勝てるわけもなく、その選択が正しかったことは、多くの顧客の支持が証明している。

 モスバーガーは、顧客のニーズを発掘することに熱心である、11年からは直接に顧客からニーズを聴き取る「タウンミーティング」を開催している。単なるアンケートではないところが注目される。

 なぜ、アンケートではなく直接かといえば、モスバーガーは地域に密着し、より深いロイヤリティを獲得していくことを目指しているからだ。それは、手間も労力もかかることであり、多店舗チェーンの普通のやり方とは違っている。

 それは、モスバーガーが、いかに食にこだわり、安心・安全でおいしい食の提供を絶えず模索しているか、を端的に示している。

 モスバーガーでは、他に先駆けて自ら食材を作り、安定供給することを始めている。97年に国内の生産農家と協力体制を築いて、06年にはモスバーガーの契約生産者である「野菜くらぶ」と共同出資し「農業生産法人サングレイス」を設立し、生鮮野菜の安定供給を実現している。

 おいしい食にこだわれば、当然のように食材の良さに行き着く。それを真摯に実現させていくことで、必然的に顧客の支持は高まっていった。

 他にもいろいろと新しい試みを行っているが、なかでも「モスのネット注文」が業績向上に大きな貢献をしているとか。また「モス カード会員」も約25万人になるそうである。さらに地域によっては配送サービスも行っている。

 このようにモスバーガーでは、顧客のニーズへの対応を手間ひまをかけて、多様なサービスを実現させている。それは一朝一夕でできるものではない。

 一方、マクドナルドはというと、ひたすらに合理化、効率化を進めていたのはいまさら言うまでもない。安さを追求して中国で生産したパテが、実に不衛生な食品だったことがバレて、信頼を大きく毀損したのは記憶に新しいことだ。

 さらに、運営でも効率化を進めた結果、かつてマクドナルドの代名詞であったスタッフから笑顔も消えていた。

 マクドナルドは、その基礎を築いた人たちの理念や目的も失っていた。いかに、現有資産を活かし、効率的に利益の最大化を図るか、それしか経営首脳の頭にはなかった、と言っても過言ではないだろう。

 その結果、直営という資産を売却してフランチャイズを増やしている。さらに商品メニューを店頭から無くす、ということもしている。効率化、ここに極まれりであったが、顧客の評判は散々なものとなった。

 マクドナルドの食に対する意識は、豚にやる餌と同義なのかもしれない。どのように顧客をぞんざいに扱っても、商品を買っていくに違いない、と思い上がっていたとしか思えない。それが、プロ経営者の手法であり、数値主義のなれの果てであったことは、いまさら言うまでもない。

 モスバーガーとマクドナルドは、おなじハンバーガーという商品を売ってはいるが、「おなじようで、実はおなじではなかった」ことがよく理解できた。

「顧客は、餌を求めているのではない、顧客は、食を求めている」、この違いはどこにあるか、それがマクドナルドには理解できなかったに違いない。

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モスクラシック 千駄ヶ谷店 冒頭画像もおなじく

モスバーガー/千駄ヶ谷に、高級バーガー「モスクラシック」

<次ページに続く>

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