■小説自作|ザ・ローガンズ 限りあるイノチ、だから(後編)

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おれたち、この先もう長くはないんだぜ

 中高年に残された時間は刻々と過ぎていくーー。あとどれくらいかは、個人差はあれど、これまで生きてきた時間より短いのは間違いない。お金も大事だが、なにか生きてきた確かな手応えがほしい、そんな気がするのはなぜか…。

■ザ・ローガンズ「限りあるイノチ、だから」(後編)

前編のあらすじ
 おれは大手家電会社に勤めるサラリーマンだ。久しぶりに高校の同級生に会うことになった。IT会社専務の海堂、エリート公務員の鈴木、宣伝屋の博通だ。そして、博通の提案で「ザ・ローガンズ」を結成することになった…。

作:cragycloud
登場人物:おれ(家電屋)
    :海堂(IT専務)
    :鈴木(公務員)
    :博通(宣伝屋)

エピソード3:いざゆかん、高級キャバクラに


引用:https://sociopouch.files.wordpress.com/2014/06/leos-house.jpg?w=640

 IT会社の専務である海堂の招待で、六本木のはずれにある高級キャバクラにいくことになった。エリート公務員の鈴木は、「おれ公務員だけど行ってもいいのかー」と言いつつも、「なんで銀座のクラブじゃないんだ」と疑問を呈していた。

 海堂曰く、「銀座のクラブは堅苦しいだろう、おれも気を使ったんだけどね」と言っていた。なるほど、これから行く高級キャバクラは気兼ねしなくて済むところらしい。その配慮はうれしいが、なんだか、お前らにはクラブなんてもったいないと言われているようで、若干悔しい気持ちにもなった。

 高級キャバクラは、六本木の夜の喧騒が嘘のように静かな場所にあった。住宅街とは違うその静寂の背景には、どこか得体の知れない空気感が感じられた。

 公務員の鈴木は、ハゲ上がった頭の汗をハンカチで拭きながら、「あれ、どこよ、えっどこよ」と、期待に満ちた顔を隠そうともしていない。

 宣伝屋の博通(ひろみち)が、「そこだよ、そこ」と指差した先には、シックな趣を漂わせた瀟洒なビルがあった。とくに派手な看板などはなく、風俗営業のお店があることを想像させるものは何ひとつなかった。

「えっ、ここがそうなのか。マンションじゃないのか」とおれは言った。
「いや違うんだ、そう見えるけど、このビルはイタリアの有名建築家が設計してんだよ」と、事情通の博通が解説してくれた。

「ほー、すごいじゃないかー。なるほどー隠れ家的なキャバクラという訳か」と鈴木が禿げ上がった頭を輝かせながら、自らを納得させるように言っていた。

 瀟洒なビルのなかにある高級キャバクラに入るとさらにびっくりした。想像していたキャバクラという風俗店の趣とはまったく違っていた。そこは、まるでロサンゼルスにあるセレブの豪邸の室内を彷彿させる様な空間だった。

 シックシンプルなモダンデザインを基調にして、椅子やテーブル、調度品などが見事な調和を見せていた。ゴージャスとも違う、とにかく趣味が良いとしか言いようがない空間が見事なまでに演出されていた。

 フロントの先には広い空間が広がっていて、そこはいわばラウンジとなっていた。モダンかつシックなデザインの椅子とテーブルがゆったりと配置されていた。なんともぜいたくな空間の使い方だった。

 また、ラウンジとは別に個室も用意されていた。

キャバクラ
だいたいが、45分~60分1set。女の子が3回転ぐらいします。

料金は4500円~8000円ほど(指名なしの場合)
ただ、2setめ以降は、指名料金が上乗せされる場合も多数あります。(最初の一時間目は4500円、次の2時間目は9000円など)
2時間目が上乗せされる場合は、2時間目以降、指名料金が無料になります。

キャバクラは、ボトルの心配等はご無用。お店の安いウイスキーや安い焼酎を、無料でほぼ制限なく飲めます。

ただ、何が高くつくって、女の子の飲み物代。
1setで基本的に3人の女の子がつくわけで、全員から「ねぇ~、なんか飲んでいい~?のどかわいちゃったー!」攻撃がくるわけです。

ニュークラ
ニュークラブといはいいますが、キャバクラのワンランク上バージョン!(名前でクラブとついてますが、ただの高級キャバクラです)
値段も、嬢のレベルも、嬢のノルマのキツさも、倍!倍!倍!

1set 10000円~。あ、ちなみに、どの店でもサ税20%が当たり前なので店長「1万円ポッキリでどうぞ!」っていう言葉がない限り、店に書いてある10000円てのは12000円のことだからね。

キャバクラでは、なんじゃこりゃ!というブサ嬢がつく可能性の方が大きいですが
ニュークラでは、まぁほぼ全員が可愛い。容姿のはずれなし。キャバクラは時給3500円ぐらい、ニュークラは時給6000円以上、可愛かったら絶対ニュークラへ行くでしょう。

ただし、会話のレベル、嬢の教養をお求めなら、本物のクラブに行ってください。
男性向け/キャバクラ・ラウンジ・ガールズバー・高級クラブの違い

 おれたちが通されたのは個室の方だった。さすが海堂は、勢いのあるIT会社専務様だけあってその度量は大きかった。個室の広さは10坪ぐらいあり、茶系の配色で統一された見事な空間だった。部屋の真ん中には、ふかふかの絨毯が敷かれていて、その上には革張りのシックなソファがでーんと鎮座していた。

 照明は、明るすぎず、また暗すぎずという程よい照度に調整されていた。非日常感に浸りながら、まったりと過ごすには、ちょうど良い空間に演出されていた。なるほど、これが高級の由縁か、とおれは妙に納得していた。

「どうだ、なかなか良いだろう」と海堂が言っていた。
「ところで高級キャバクラとクラブって、どう違うんだ」と鈴木が疑問を呈した。
「そうだな、あまり違いはないが、あえていえば、女性の年齢かな」

「あっ、なるほどねー」と鈴木はそう言いながら大きく頷いていた。
「ところで鈴木は、どうなんだ。クラブの熟女とキャバの若い女性とでは…」とおれは鈴木に尋ねた。鈴木は頭を傾げて、コキッと音を鳴らしたあとに言った。

「まーそうだね。やはり若い女性かな。待てよ、いやいや熟女もいいよー、壇蜜なんて嫌いじゃないしね。いやー熟女もいいかもねー」
「あ、そーなんだ。壇蜜が好きかー」

「なーんだよ、壇蜜ダメかー。ダ、ダンミツーー!」と鈴木はミキティー!という芸人のネタを真似て叫んでいた。

「おまいらー、ここの女性は粒ぞろいだぞー、びっくらするなよ」と博通が言っていた。どうやら海堂にこの店を紹介したのは、博通らしかった。さすが宣伝屋らしく、夜の世界にも通じているようだった。

 くだらない無駄話をしていたところ、ドアをノックする音が聞こえて、「失礼いたしまーす」、「いらっしゃいませー」という声とともに4人の女性が個室に入ってきた。と同時にフェロモンを刺激するいい匂いに部屋が満たされた。

 マリ、ユミ、アコ、リノ、とそれぞれが自己紹介をした。いずれの女性もまだ若く、何れ菖蒲か杜若と思わざるを得ない、美人さんだった。

何れ菖蒲か杜若(いずれあやめかかきつばた)
意味:いずれ菖蒲か杜若とは、どちらもすぐれていて、選択に迷うことのたとえ。

 どの女性も胸が大きく開いた長いドレスを着ていた。ドレスには太もも上部までスリットが入っていて、なんとも艶めかしい雰囲気を醸し出していた。

 鈴木は、それを垣間見たせいか、なんだか息遣いが荒くなっていた。鼻の穴を大きく広げながら、ふん、ふんと何事かを呟いていた。それを本人はどうやら気が付いていないようだった。ふん、ふんと呟く度に鼻の穴が膨らんでいた。

 おれは何か言おうとしたが、自分の股間もなんだか怪しげだった。鼻息の荒い鈴木を見て、おれはなんだか親近感が湧いていた。

 リノと名乗った女性は、海堂の隣に座った。どうやらご贔屓にしているらしい。アコは、博通の隣に座りながら、「いつもお世話になっています」と言っていた。マリとユミは、おれと鈴木がいるソファーにきて座った。

 おれは、マリとユミに挟まれる形の、いわゆる両手に花の状態になっていた。それを見た鈴木は、なんだかなーという不満そうな顔をおれに向けてきた。

「マリさんは、なんだかエキゾチックな美人系の面立ちですね。もしかして、ハーフさんですか」と鈴木が言った。
「いいえ、違いますよー。よく言われるけど、日本人です」
「そうなんだー、てっきりアジア系のハーフさんかなーと思いましたよ。そうですかー、エキゾチックジャパンなんですか」

エキゾチック
外国の雰囲気、情緒のあるさま。異国的。

「ユミさんもエキゾチックですよね」とおれは右隣にいるユミに言った。
「そうですか、でもハーフじゃありませんよ。残念ながら」
「そうですかー、でも美人さんだし、スタイルもナイスで文句の付けようがない。容姿端麗でうらやましい限りだ。あれ、これってセクハラですかね」

「えっ、セクハラですかー。いやーそれは場違いじゃないですかー」
「あっ、そうですよね。あのですねー、あっちにいる二人と違って、こっちの二人はなにしろ堅いんで、その辺りご了承くださいね」とおれは言った。

「なーにが堅いんだって。えっ、お前らは勃つものも立たないんじゃなかったか、堅いも何もないだろう」と博通がここぞとばかりに下ネタを繰り出した。

「おーれは、間違いなく勃つからね。間違いなく」となぜか、鈴木が気色ばんだ顔つきで博通に向かって言っていた。

「な、そうだろー」と酔っ払いの鈴木はおれに同意を求めた。
「おれに聞くなよ。お前が勃つかどうかなんて知らないよ」
「いや、勃つんだ。十分過ぎるほどな。大丈夫なんだ。ねー」と言いながら、隣に座るマリさんに同意を求めていた。

 返答にこまったマリさんが、おれの方を見て「ワオ!」という仕草をしていた。

「鈴木ー、さすがだよ。やはりハゲは精力絶倫なんだな。お前がそれを証明しているよ。この絶倫ハゲがー」とおれは言った。
「そうなんだ、ハゲは絶倫なんだぞ。って、ハ、ハゲ〜は余分なんだよ。ちくしょうー」と鈴木は言うと、頭に手を当てて「あー、髪の毛がない」と呟いた。

エピソード4:ハゲと白髪とEDと絶倫


引用:https://item-shopping.c.yimg.jp/i/l/angelr_ar5245

 海堂は、おれたちの浮き足立つ様相を黙って見つめながら、ときおり隣に座るリノさんに何事かを話しかけていた。

「なっ、海堂よ。やっぱりお前ぐらい出世すると愛人の一人や二人いるのか」とおれは酔っ払った勢いで海堂に尋ねた。
「なに言ってんだ、お前は。そんな訳ないだろー」
「いや、いるんだ。そうに違いない」とおれは決めつけた。

「決まってるだろー、いない訳ないだろー。海堂は見るからに絶倫そうだし、精力があり余ってる感じが濃厚に漂ってるぞ」と鈴木がエリート公務員らしからぬ物言いで断定していた。

「しょうがねーな、お前らは。じゃー、そういうことにしとくか」と海堂は言って、ウィンクをしてみせた。
「やっぱりな、海堂は頭髪はふさふさで、黒々としてるしな。いや、待てよその頭、染めてるよな。たしか」とおれは何かを思い出したように言った。

「待ってくれ、なんでおれを攻め立てるかな。博通に矛先を変えろよ」と海堂はその話題には触れるなといわんばかりに言った。

「そうかー、じゃ博通ー。お前はEDだろ、違うか」と完全に酔っ払いと化したエリート公務員の鈴木が唐突に言った。
「ばっかじゃないか、このハゲ〜。なんでEDなんだよ、その根拠を言え」と博通は酔っ払いの鈴木に向かって、こまった奴めといわんばかりの顔つきで言った。

「じゃさ、その根拠を言おう。だいたいさ、博通みたいな宣伝屋の太鼓持ちはさ、知らず知らずのうちに神経がやられてるんだよ。いわゆるストレスでな。でな、男の逸物の元気はさ、その精神性に一番影響されるんだよ。違うか」

 鈴木はそう言うと、自らで納得するようにうん、うんと頷いていた。そして、隣のマリさんに「ねー、そうだよね」と言っていた。マリさんは、仕方なく「ワオ!」という仕草を二度繰り返していた。

「ばっかやろが、このハゲーーーー!」と博通が大きな叫び声を上げていた。それを合図に、みんな揃って「がははははーーー」と、笑っていた。

 ハゲと白髪とEDと絶倫、ハゲ(鈴木)と白髪(おれ)は、誰が見ても確定だが、EDと絶倫はあくまで疑惑である。しかし鈴木が断定したように、当たらずとも遠からずのような雰囲気になっている。

 とにかく中高年4人組、ザ・ローガンズには、それぞれ背景は違えども、抱えている問題が少なからずあることが判った。

女性を誘う上でお酒を飲むっていうのは
男性からすれば小さなセックスのアピールだったりします。

それもそのはずで
まったく興味がない女性であれば
まず誘わないしセックスという意思がなくても
あわよくば…なにかあれば…くらいの感情は
男子たるもの少なからずあるんですね。

お酒っていうのはリラックスできます。
それは交感神経より副交感神経が勝るということ。
つまり飲酒=性欲を増やす働きがあるんです。

それに+αで起こる現象が理性の開放。
お酒で「萎える男性・元気になる男性」その違いとは?

エピローグ:限りあるイノチ、だから

「おまいら、忘れてないだろうな。おれたちは何だー!」と、博通が別れ際に一言発した。それを訊いて全員で「ザ・ローガンズ!」と叫んでいた。

 それから、それぞれ帰宅の途についた。

 海堂のおかげでなんともいえない、非日常的な一夜を過ごした。それは、一夜限りの楽園での出来事ともいえた。しかし、個人的には、もう二度と行くことのない世界だろうと思っていた。

 とても楽しかったが、あの世界を堪能するには自分は身分不相応だと思い知らされた。自分のようなサラリーマンには不釣り合いこの上なかった。

 海堂は、また行こうと言ってくれたが、たぶんおれは行くことはない。

 あれから1週間ほどが経った。「ザ・ローガンズ」て、いったい何をやるんだろうか。いまだに詳細は不明のままだ。仕切り役の博通からまだ連絡はなかった。

 協力するのはやぶさかではないが、若干不安も拭えなかった。了承した以上、とにかく連絡を待つしかなかった。

 そんな訳で、もうすっかり平常の日常生活にどっぷりと浸かっていた。

 海堂は、創業期から在籍するIT会社で専務となって一見すると羽振りがいいが、海堂の周りはいまではエリートだらけのはずだ。一方、海堂は典型的な叩き上げだった。たぶん、会社ではかなりのプレッシャーを受けているに違いなかった。

 創業社長と株主たちに十分な成果を示さないといけない立場にあるはずだ。それは並大抵の仕事ではない。かなりのストレスと絶えず向き合っている状態だろう。

 大手広告代理店の博通は、ひょうひょうと生きてるようだが、その実態は鈴木が指摘した通りかもしれない。それこそいつEDになってもおかしくはない、そんなことが想像できた。また広告代理店は、違法残業等で非難されている状況にある。

 エリート公務員の鈴木は、おれたちのなかで一番優秀で学歴も飛び抜けていた。官僚にもなれたはずだが、なぜか東京都の公務員を選んだ。いずれは、かなりの出世が見込まれるが、先日の高級キャバという楽園での出来事を振り返ると、そのストレスが半端ではないことが伺えた。

 鈴木は、博通をストレス過多と看破したが、それは鈴木自身のことかもしれなかった。たぶん、そうに違いない。

 そして、おれは大手家電会社に入社した頃は、みんなに羨ましがられたが、あれから数十年が経って、いまでは会社の実態は無いに等しく、見るも無残な状況となった。おれもいつリストラされても不思議はなかった。

 海堂が、別れ際におれに向かってあることを言っていた。「なー、相談事があるときは遠慮なく言ってくれ」と…。

 おれたち中高年に未来はあるのか、それは知る由もないが、とにかくこれまで生きてきた時間より、とても短い時間しか残されていないのは確かだ。

 リストラに悶々とする自分が情けなく、一方ではこのままでいいはずはない、とも感じている。生きているうちに、そう確かな手応えがほしい。

 そんな気持ちが日々強くなっていた……。

<ザ・ローガンス「限りあるイノチ、だから」後編おわり>

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