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■世界|トランプ新大統領就任 世界の構造はこれから変化するのか否か

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何をやろうとして、どこまでやるか

 2017年1月20日(現地時間)、アメリカでトランプ新大統領が就任した。

 大統領に当選したばかりの頃は、なんとなく大人しかったトランプ氏だったが、大統領への就任が近づくにつれて本領を遺憾なく発揮していた。ツイッターでは連日のようにマスメディアや反対する勢力を攻撃してやまなかった。

 イスラムテロ組織の暗殺が噂されていたが、それも難なくクリアし、ついに1月20日、就任式を迎えてトランプ新大統領が誕生した。

 大統領就任式の演説では、既存の政治家やその政策を非難し、自らの主義主張である「アメリカ・ファースト」を唱え、米国第一主義を高らかに宣言した。

 そして、就任早々にTPPからの離脱、NAFTAの再交渉を正式に表明した。

 マスメディアでは、今後の成り行きを予想することが難しいようだ。それを裏付けるように論調が一定していない。はたして、トランプ大統領はアメリカの構造を転換することができるか否か。そして世界はどう動くか。

 世界は、その成り行きをじっと見守っている。

トランプ相場にうつつを抜かす日本の危うさ

 すったもんだの末にようやく締結したTPPは、大統領が変わった途端にゴミ箱に捨てられてしまったようだ。一部では、アメリカ抜きで実行しようとする動きもあるようだが、アメリカ抜きではその効果も薄いのは言うまでもない。

 日本では、トランプ相場が活況を呈して株価は上昇した。しかし、トランプ大統領は、ドル高を懸念していると発言しており、ドル安政策に向かう可能性があることを匂わせている。そうなると、たちどころに円高となるのは間違いない。

 そのような背景にあっても、日本ではバブルの到来とか、年末(2017年)までに、株価が3万円とか、4万円も夢ではない、と一部の投資筋は煽り立てている。

 ある株専門サイトでは、日本の株価が上昇する理由に、トランプ相場とは違う要因を挙げていた。それは、企業が内部留保している資金が、株式市場に向かうからだとしている。溜め込んだ資金を人材や設備投資ではなく、手っ取り早く利益を出すために株に投資するという理屈である。

 それで株式市場が高騰しても、それは実態経済を映したものではない。だから、株専門サイトでは、2017年をバブルの到来と呼んでいる。

 とにかく、一般庶民とは関係ない株価上昇とバブルであるのは言うまでもない。もっとも、その通りになるとは限らないが、とりあえず要注目である。

 それはさておき、トランプ大統領の誕生によって世界の何がどう変わるのか、それをいま一度、トランプの主義・主張を前提にして整理してみたい。

<アメリカ第一主義>

 これは、端的にいえば孤立、あるいは保護主義であり、また反グローバリズムともいえるだろう。代表となる政策は、製造業を国内回帰させて、米国人をそこに雇用させることを目的としている。

 行き過ぎたグローバリズムを是正することはいいとして、こんどは保護主義が行き過ぎれば、消費者が不利益を被るのは間違いない。着地点をどのあたりにするかが、これから問われるに違いない。

 一方では、軍備増強を掲げているが、その反面で同盟国などへの軍事派遣を縮小、または撤退を示唆している。同盟国、自由主義陣営の最前線から撤退し、軍事的にも国内を優先させるとしている。

 これは、ある意味では、アメリカの世界覇権からの撤退とみることができる。アメリカは、これまで同盟国は言うまでもなく、各国の政治に干渉することに軍事を最大限に利用するだけでなく、ありとあらゆることをして覇権を維持してきた。

 しかし、トランプ流の考えでは、それらの行為は、なんら「米国の利益になっていない」と一刀両断されてしまった。

 とにかく、アメリカさえよけりゃー、世界がどうなろうと知ったこっちゃない。乱暴な言い方をすれば、そのようなことであるに相違ないだろう。

 現在、アメリカ経済は、世界のなかでも一人勝ち状態となっている。そんな状態と、トランプ大統領の政策がはたして相入れるものなのか。そんな矛盾を抱えたまま、アメリカは孤立、保護主義路線に向かおうとしている。

 それが功を成すかどうかは、いずれ明らかになると思われる。

アメリカ第一主義のキーワード

 テーマは、端的にいえば「国内回帰」ということができる。別の意味でいえば、「アメリカの利益を最大限にする」ことだと解釈できる。

・反グローバリズム(製造業などの国内回帰)
・反移民(移民の制限、または排除)
・反EU(欧州の分断)
・軍備増強と国内強化
・同盟国および世界に展開する軍事的な縮小、または撤退

他にもあるが、省略いたします。あしからず。

トランプにグローバル企業もなびくが…

 トランプ大統領の強い主張に対し、グローバル企業がその対応に追われているようだ。例えば、フォードはメキシコへの工場建設をやめて米国内に、またトヨタやソフトバンクも米国に新たな投資をすると発表している。

 いまのところトランプの恫喝は効果を上げている。それに味をしめてどこまでトランプ流の政策を加速させていくかが、今後の焦点となる。

 そして、その先にあるのは、過去の事例を超えて新たな次元を迎えるのか、それとも先人たちと同じ穴のムジナとなるか、それが気がかりといえる。

反グローバリズムで国家を優先するはずが国内の分断を招いて国家を弱体化させる恐れ
米国の冷戦後の戦略を示した「国防計画指針(DPG)」というものがあった。

それは機密文書であった。ブッシュ(父)政権時代に国防総省がソ連崩壊後の国際社会で米国は何を目指すかの「指針」を示すため作成した。

それは機密文書であるから公にされるはずはなかったが、なぜか1992年にワシントン・ポスト紙にリークされた。そこには世界のいかなる地域においても米国に対抗できる国家の出現を許さず、米国だけがグローバル・パワーとしての地位を維持すると書かれてある。

米国だけが国際秩序を作り、その秩序の下で他の国は「正当な利益」を得ることが出来るが、何が「正当な利益」かを決めるのは米国である。

そして他の国が地域でのリーダーシップを握って米国に挑戦するのを防ぐため、米国は軍事的・経済的・外交的なメカニズムを構築するとして、ロシアに対しては武装解除と核兵器の減少を進め、東欧地域における覇権的な地位の回復を阻止するとしている。

欧州に対してはNATOを安全保障の基盤とし、欧州諸国が欧州だけの安全保障システムを作ることを許さない。アジアでは日本がより大きな地域的役割を担うことを阻止し、米国が優越的な軍事力を維持し続ける方針を示す。

そして問題は米国の潜在的な敵性国としてロシア、中国だけでなく、同盟国である日本とドイツが挙げられていることだ。

 冷戦後から、オバマ大統領まで、アメリカはグローバル化を推進することで繁栄してきたと言っても過言ではない。

 ところが、トランプ大統領は、一転して反グローバリズムを主張して当選を果たした。トランプ支持者たちは、おおむねグローバリズムの恩恵を受けていなかった。草木もなびくグローバリズムもついに鉄槌がくだされた。

 グローバリズムは、アメリカをはじめ大企業の最大利益を目的としていた。それが功を成していたが、利益は一部の特権者に偏り過ぎていた。その反動がいま世界中で起きている。そして、アメリカでトランプ大統領を誕生させた。

 しかし、トランプ大統領もアメリカの最大利益を目指していることに変わりはない。グローバリズムの推進か、反グローバリズムかという違いはあれど。(その違いが大きいのは言うまでもないが)

 上記リンク先では、トランプ流は国家分断を招き混乱をもたらすとしている。アメリカでは、大統領就任に際し前代未聞の反トランプデモが行われた。

 トランプ流がどこまで通じるか分からないが、すでに一部の大企業はトランプになびいている。それを考慮すると、流れは大きく変わりそうな雲行きにある。ただし、何事も一寸先は闇であるから、先行きは予断がならない。

 最後に、アメリカがこれまでどおり、中国や韓国を使って日本叩きを続けるか、それとも戦略方針を転換させるかである。もし転換させた場合、アジア情勢はだいぶ様変わりすると思われる。しかし、同時にきな臭くもなるはずだ。

追記:
 トランプ米大統領は25日、メキシコ国境に壁を建設するとともに、米国への移民流入規制を強化する大統領令に署名した。トランプ米大統領、国境の壁建設で大統領令-移民取り締まり強化へ

写真引用:ドナルド・トランプ/ウィキペディアより

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