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■社会|DeNAパクリサイト謝罪会見 悪しきは上から下に流れるはずだが…

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経営トップは、関与を曖昧にする

 11月29日、IT企業大手のDeNAは、自社が運営する医療・健康サイトに不適切な記事が多数露見したことから、サイトを閉鎖すると発表した。その後、おなじく運営する9個のサイトもおなじ問題により閉鎖された。

 この問題では以下のようなことが明らかになっている。

<DeNA・キュレーションサイト不祥事の要約>
・掲載した多くの記事がパクリであったこと。
・情報に不適正、不正確な内容が多かったこと。
・キュレーションという表向きの裏で、素人に一文字0.5円で記事を書かせていた。
・パクリを推奨する、マニュアルがあったこと。
・一日で数百に及ぶクソ記事を配信して、詐欺まがいのSEO対策をしていたこと。
・情報サイトの裏でアフィリエイトが目的となっていたこと。

・それらを容認していた経営トップがいたこと。

 これらを端的にいえば、全社一丸となってパクリでお金を稼いでいたと言うことができるだろう。なんでも、四半期で10億から15億の収益があったそうだ。

 収益性の高いインチキサイトのビジネスモデルとしては成功していたといえる。しかし、倫理なきお金儲けは、詐欺と同義であるのは言うまでもない。そのことを経営陣は、少しも考えに至らなかったようだ。

謝罪会見で垣間みられた不可思議

 12月7日、DeNAはこの問題に関して謝罪会見を開いた。出席したのは、代表取締役社長兼CEOの守安功氏、経営企画本部長の小林賢治氏、そして創業社長で現取締役会長である南場智子氏の3名であった。

 その場に、キュレーションサイトの事業責任者の姿はなかった。これには、集まった多くのジャーナリストたちが、どういうことかと疑問に感じたに違いない。

 現場の責任者がいないのは、うがった見方をすれば、あまり追求されたくなかったからに違いないと思われても仕方がないだろう。

 DeNAでは、一応真摯に謝罪はしたが、経営陣は続投するということらしい。社長兼CEOの守安功氏は、「自分の責務は、この問題を是正することにある」というニュアンスの言葉を返していた。

 これは、日本の政治家や経営者の常套句であるのは言うまでもない。またか!と思うしかなかった。アメリカや欧州であれば、クビであるに違いないが。

 おなじく、創業者である会長も社長をかばっていたように思われた。社長は、けっして数値偏重だけの経営者ではないと言っていた。しかし、結果を見れば数値至上主義が、会社内に蔓延していたことを思わせるが。

 数値至上主義とは、目的が数字を上げることに偏重することだ。本来の事業目的が忘れられて、数字の目標達成が一番重要視される。そして、数値ばかりを追い求めて、何をしても結果がよければ良しとされる風潮が定着していく。

 会社が収益を求めるのは理に適っているが、顧客をないがしろにして、お金儲け目的で事業を起こしたのではないはずだ。何かに追い立てられて、どこかで事業目的がお金にすり替わったとしか言いようがない。

 想像するに、DeNAのサイトでは、収支計画を立てる際に利益を先に立てて、コストを割り当てていたのではないか。なぜなら、情報サイトという割には質がとても悪すぎたからだ。それも一文字0.5円のパクリ記事では仕方もないが。

 DeNAでは、「iemo」と「MERY」というキュレーションサイトを約50億円で買収している。どちらのサイトにもパクリ疑惑があったが、深く調査しなかったのか知る由もないが、意外と高値で買収している。ちなみに「MERY」は、ユーザー(主に若い女性)の評判は高かったといわれている。

 そして、「iemo」の代表村田マリ氏がDeNAの執行役員となり、同時にキュレーションサイトの事業責任者となっている。今回の謝罪会見にも当然出席してしかるべき当事者のはずだったが、なぜか出席しなかった。

 あくまで個人的な見解であるが、DeNAが、「iemo」と「MERY」を買収したのは、その卓越したパクリ技術のノウハウだったのではないか。そして、そのパクリ技術のプロである村田マリ氏を事業責任者に据えた。

 憶測の域をでないが、そのように考えることもできる。なにしろ、DeNAは携帯ゲームで行き過ぎたコンプガチャ問題の当事者であったのは記憶に新しいからだ。経営陣の紳士然とした見た目と違って、会社は案外こすからい体をなしている。

こすからい=「けちでずるい」の意

 今回の問題が発生してもなお、社長は続投するらしいが、日本的な責任者不在のままで、はたして問題の根を断ち切ることができるか、はなはだ疑問に感じざるを得ないのは言うまでもないだろう。

外部関連記事:DeNAのWELQ問題、最大の原因とされている責任者「村田マリ」とは何者なのか?

DeNAのキュレーションサイトには編集部がなかった

 訊くところによると、DeNAのキュレーションサイトには編集部がなかったそうだ。プロデューサーがいて、その下にディレクター、外部委託業者、さらに素人ライターとなっていた。実際に記事を書き起こすライターが一番低収入だった。

 プロデューサーが何をしていたか知る由もないが、たぶん外部に丸投げしていたのだろう。プロデューサー各自にパクリ記事作成の本数が、ノルマとして課せられていたかもしれない。なお、あくまで推測であるのは言うまでもないが。

 キュレーションの意味どおりに記事を起こすとすれば、情報を収集し、選定し、それを再編集するという流れになる。これをDeNA流にすると、パクリ元を収集し、使えそうなものを選び出し、それを若干加工(再編集)して記事にする。ということになるはずだが違うだろうか。

 キュレーションサイトというITメディアが、既存の出版社などとは大きく違ったメディアであるのが、よーくわかる次第だ。出版社では、編集部があり、校閲部がある。ある意味では二重のチェック機能が働いている。

 時間も手間もかかるが、それもこれも顧客ありきという考えが浸透しているからに他ならない。しかし、ITメディアでは、そんなことは御構い無しに合理化し、効率化を推し進めてやまない。なにしろスピードが命だからだ。

 しかし、それはイコール、顧客のことなどどーでもいいと考えていると同義である。ITメディアでは、とにかく儲かるコトが何よりも優先されている。いかにクソ記事でも量を多くすればお金につながっていくからだ。

 中身がなくても問題ない、記事の質なんてくそくらえ、量こそがキュレーションサイトの要であり命なりとなっていた。

 DeNAは、そんなDNAを変えることができるか否か、それが問われている。

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