役人曰く、小さく産んで大きく育てる
コンパクトを売りにしてオリンピックを招致したはずが、開催費用の高騰が止まらない。五輪組織委の会長は、ソチ・冬季オリンピックの開催費用約5兆円を引き合いに出して、それぐらいかかると発言している。
2020東京五輪の開催費用は、当初1兆円を大きく下回る金額であった。しかし、現在ではそれを大きく上回って、いったいどれだけ費用がかかるのか誰も答えようとしていない。当初の計画案はどこにいったのか。
現在、2兆円、いや3兆円ともいわれているが、その根拠がどこにあるのか誰も知らないようだ、怪しすぎるにも程があろうというもんだ。
東京五輪をクリーンにする!
新しい都知事となった小池都知事は、東京五輪に関して予算の見直しをするという発言をしている。とはいえ、見直しに抵抗する勢力があることを考えると、それが並大抵のことではないと想像できる。
一般市民としては、できることに限界があるので小池都知事の姿勢を応援することぐらいしかできない。抵抗する勢力である総本山は組織委員会であり、その陰には自民党都議団がいるといわれている。
自民党都議団のボスが関連する某企業は、すでに五輪施設の建設を受注したといわれている。とにかく、怪しさマックスの五輪予算であるが、小池都知事には、残された時間が少ないことが懸念される。
より速く、より高く、より強く、そしてよりクリーンに!
第一に、私たちは契約の透明性を実現する。
第二に、大会の監査業務は特別に選任した会計士と汚職対策専門家に委託する。
最後に、関係者にそれぞれの責任を果たすことを求める。
小池百合子(東京都知事)ニューズウィーク8/30
今回の東京五輪の一番の問題点は、大会の計画や、運営担当が分散されていて、責任の所在がはっきりしていないことが挙げられている。
たしかに、新国立競技場の問題でも誰に責任があったか、それはウヤムヤのままにして新しい建築デザインが決められた。当初案の責任者と思われる安藤忠雄氏がやったことは、神宮の森の一部を伐採したことだけであった。
自然との共生が売りの建築家であった安藤氏であるが、すでに樹々を伐採してしまったことをどう思うのか、ぜひ訊いてみたいが。
五輪組織委の会長が、新国立競技場に「2500億円ぐらい出せないのか」と言ったのは記憶に新しい。いやはや、これは思い出すたびに、何故この人が会長なんだろうと思うばかりだ。
それはさておき、問題の根源は五輪招致の際の予算にあるのは間違いない。
訊くところでは、予算はハナから少なく見積もっていたといわれる。それは役人のお仕事のいつものやり方であるらしい。「小さく産んで、大きく育てる」のが、役人の事業のやり方として通例化しているそうだ。
それは民間では通じるはずがないのは明らかである。民間では、事業予算の正確さが求められる、それは収益性を見極めるためだ。したがって、収益性が見込めなければ、計画は中止を余儀なくされる。
間違っても、予算が超過することが度々繰り返されることはない。
三菱重工の客船や飛行機で予算が大幅に超過しているが、それはある意味では、大企業病という役人体質が蔓延したからに他ならないだろう。
役人は、確信犯である。予算を少なく見積もって事業の承認を得れば、あとはそのプロジェクトが中止になることはない。それがお役所仕事というもんだ。それをよく知り尽くしたお役人は、事業予算を最大限に膨らませていく。
東京五輪を中止にする訳がないとお役人や政治家は高を括っている。
そして、そこに利権がもぐりこむ余地が生まれてくる。政治家、お役人、業者が三つ巴になってそれにたかるという見事な構図の出来上がりである。
東京五輪は、そんな利権の構図の最大規模の事業であり、利権は蜘蛛の巣のように絡めあっているに違いない。
小池都知事の予算見直しの前途が険しいのは、見るに明らかといえる。それでもなお、都知事とその周辺関係者に期待せずにはいられない。
<ロンドン五輪と東京五輪の比較/2016年>
引用:http://card-professor.jp/wp/wp-content/uploads/2015/03/tokyo-olympics5.jpg
大成建設、五輪会場99.99%落札に疑問の声
ボートとカヌー・スプリントの競技会場となる「海の森水上競技場」は、東京都が整備予算を負担する恒久施設の一つ。開催都市立候補の段階では約69億円の予算だったが、開催決定後、周辺工事費用などが含まれていなかったとして約1038億円まで膨れ上がった。
結局、試算を見直し、約491億円となったが、小池百合子知事は「500億円を海に捨てるようなもの」と批判している。
「海の森水上競技場」は、当初69億円→1038億円→491億円と推移している。
この「海の森水上競技場」の建設に官製談合(たぶんそうだ)が疑われている。専門家がみれば、よく分かるに違いないが、それでもそんなの関係ないとばかりに堂々と行なわれている。
それが、東京五輪の利権の構図を物語っている。政治家、役人、業者の三つ巴だから、鬼に金棒、誰に文句をいわれてもどこ吹く風のごとしだ。
これは、ほんの一端に過ぎないのは言うまでもない。
ちなみに、東京五輪の予算は公共事業の側面があり、そこに積極的にお金を投じることは好景気をもたらす効果がある、という一部の有識者もいます。そのような人たちは、お金は回り巡って税金として戻ってくると言います。
競技場や道路を作ったら、建築や土建、さらに資材など関連する企業と、そこで働く全員が税金を払ってくれるからだそうです。
しかし、それは本当でしょうか。それなら国や地方が過去に行ってきたハコモノ事業も効果があったということです。しかし、多くの施設が行き詰まった末に二束三文で売り払われているのは何故でしょうか。
それで収支が合っていたとは到底思われません。公共事業が果たす役割は、たしかに重要であると思われます。しかし、それをいいことに必要以上の費用をかけてハコモノを造ることは、むしろ逆効果となるのが必然と思われます。
以下は、整備が計画されている施設イメージの一部です。
有明体操競技場
有明BMXコース(左)と有明ベロドローム(右)
お台場海浜公園
潮風公園
海の森クロスカントリーコース
皇居外苑
環状2号線 築地市場をかすめて通ります
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写真:東京都オリンピック・パラリンピック準備局
冒頭写真:東京景観
引用:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201602/images/PK2016020602100053_size0.jpg
週刊ニューズウィーク日本版〈2016年8/30号〉 [雑誌]
特集:世界が期待するTOKYO
リオ五輪の熱狂は4年後の東京大会へ──
世界は2020年のTOKYOに何を期待するのか
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