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■映画|月に囚われた男 MOON

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期待せずに観たが、驚いたことにそれは傑作であった


月に囚われた男 置かれた状況を象徴しているビジュアル

ほぼ一人しか登場しないが、まったくそれを感じさせない

この「月に囚われた男」を監督したダンカン・ジョーンズは、ヴィジュアル系音楽の先駆けとなった、あのデビット・ボウイの息子だそうである。しかし、そんなことはどうでもいいぐらい、この映画は良く出来ていた。

ダンカン・ジョーンズ監督は、ボウイの息子という七光り的要素は、なんら必要はない才能の持ち主のようだ。

個人的には、この映画の情報をまったく持っていなかった。たまたまレンタルショップで見かけて借りてみたのである。だから、2010年に日本公開されていたのも知らなかった。たぶん、あまりヒットはしなかったのだろう。

傑作と書いたが、それは個人的見解であり、大ヒットする映画とはいえない。地味ではあるが、その革新的な手法が注目に値すると感じた次第である。

どこが革新的かといえば、なんと映画の全編を通してほぼ一人の主人公しか出てこない。主人公を演じたサム・ロックウェルという役者の演技力も素晴らしいが、それ以上にこのような演出を選択し、それを見事に映像化した監督の才能、力量が素晴らしいと思う次第である。

個人的には、映画全編を通してなんら不自然な感じを抱く事なく見終わった。そして、見終わった後に、あれ、言われてみれば一人しか出ってなかったな、と気付くのであった。

映画の設定は、月にあるエネルギー資源の採掘基地に従事する、たったひとりの作業員に起こる不可解な出来事を描いたものである。したがって、登場人物が一人しか出てこなくても、なんら不思議ではない。たぶん予算の問題もあったかもしれない。

ちなみに、製作費は500万ドル以下だったそうだ。日本映画でも、それぐらいの予算で作られる映画は多いと思うが、何故か陳腐な印象しかない。

それに比較して、この「月に囚われた男」に感じる印象は、深く静かに心に浸透してくるようである。それは映像表現に豊かな感性が注がれた結果ではないかと想像する。僅かな予算でも、考え抜けばここまで出来ると云う見本のような映画である。

日本の監督にも見習ってほしいと思う次第である。少し具体的にいうと、日本の映画には余分なシーンが多いと感じている。観客は、感動や涙を求めていると勘違いしている、としか思えないシーンがやたらと目立つのである。

ところが、この映画ではそのような場面を実にあっさりと撮っている。例えば、主人公が過去を回想するシーンなどである。日本映画ならきっとくどいほど感動的にお涙ちょうだいとばかりに撮るだろう。

しかし、この映画では主題と関係ない部分は思い切り良く見切って、どんどん結末に向かっていく。これは観ていて気持ちがいいし、また時間がとても短く思えた。

ダンカン・ジョーンズ監督の次回作にも期待したいと思う次第である。

なお、「月に囚われた男」はSF映画です。しかし、SF映画が苦手な人にも御薦めしたいと思います。何故かといえば、宇宙空間でのドンパチはまったくありません。

また、SF特有の背景のくどい説明もありません。ただひたすらに月にひとり置かれた状況を描いています。

シチュエーション映画というジャンルがありますが、この映画もその範疇に入るのかもしれません。

<月に囚われた男/ストーリー>

主人公サム(サム・ロックウェル)は、月にあるエネルギー資源の採掘基地で、たった一人で仕事に従事している。契約期間は3年である。地球との直接の通信は、原因不明の不具合によってできない状態である。サムの相手は人口知能コンピュータのみである。契約期間の満了まで2週間となった頃から、サムの身の周りに不可解な出来事が起きる。ある日、採掘現場に向かったサムは、幻覚を見たことで気を取られて事故を起こしてしまう。

記憶が定かではないサムは、基地の医療施設で目が覚めた。そこには、何故か自分そっくりのもうひとりの人物がいた。この状況をコンピュータは説明しようとはしない。何かを隠している気配が濃厚であった。サムともうひとりのサムは、お互いを見つめ合い、また牽制し合うのであった。そして、その隠された謎が明かされる時がきた。それは何か!。

この続きは、ぜひレンタルして観てください!

<スタッフ/キャスト>
監督・脚本: ダンカン・ジョーンズ
出演:サム・ロックウェル
  :ケビン・スペイシー(コンピュータの声)
公開:日本 2010年

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