新市場主義は、何処へ!
アベノミクスの推進により、新市場主義者がふたたび息を吹き返しそうである。規制緩和は必要と考えるが、間違った方向へ向かうのだけは勘弁してほしい。80年代以降の新市場主義の動きを、高橋乗宣著「世界恐慌の襲来」より抜粋し以下の様に紹介します。
2013年世界経済総崩れの年になる!
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レーガノミックス
米国は機軸通貨国としての特権を最大限活用し、「虚構の繁栄」を作り出すことで、経済の実力とはかけ離れた「強いドル」「強い米国」を維持し続けてきた。その虚構の繁栄策の代表が、81年〜89年までのレーガン大統領政権下で推進された「レーガノミックス」である。
レーガノミックスの背景にあったのは、「新自由主義」と「小さな政府」という思想だ。それまでの不況下で行われた公共投資によって需要を創出し、景気を浮揚させてきたケインズ主義とは対極する考え方で、供給側(サプライサイド)を重要視する政策手法であった。具体的には、企業や家計の大幅減税、規制緩和、そして歳出削減とインフレ抑制のための金融引き締めが政策の柱となった。
レーガノミックスでは、企業の税率を下げれば企業は設備投資や生産増など経済活動を積極的に行う。同時に家計の税負担を下げる事で消費が活発化すれば企業の業績も向上し、税収が増えるというシナリオを描いていた。
しかし、消費は増えたものの、税収は伸び悩み、財政を悪化させる結果となった。強いアメリカ政策のもと、ソ連との軍拡競争が多大な歳出増となり、財政赤字をさらに増やした。税率を下げても税収が増えるという理論的根拠に乏しかったことから、「ブードゥー経済学(呪術的経済学)」と揶揄された。
ニューエコノミー
90年代後半から2000年初頭にかけて喧伝されたのが「ニューエコノミー」だ。これまでの経済理論では、経済は景気の上昇と後退を波のように繰り返しながら徐々に成長してゆくと考えてきた。しかし、景気循環は過去のものであり、景気は後退しないまま成長が続くと言い出したのがニューエコノミー論だ。
IT革命と呼ばれた情報通信技術の発展で、企業の調達や生産、在庫調整などが最適化され、生産性が向上することで、従来の景気循環が消滅し、低インフレのまま長期の経済成長が続くというのがその根拠であった。
金融恐慌
サブプライムローンの焦げ付きが問題化するまで、空前の住宅・不動産投機ブームや株価の史上最高値が続いていた。これを支えていたのが、証券化やデリバティブ(金融派生商品)など、金融工学を用いた投資手法だった。ヘッジファンドや投資銀行を中心に、世界中のマネーが米国に流れ込み、世界経済全体がこのバブルに飲み込まれた。
最先端の金融技術を用いた証券化の手法は、リスクを減少させ、なおかつ高利回りの収益が実現できるという夢のような金融商品を生み出したと思われたが、そんな錬金術のようなうまい話しがいつまでも続くはずはない。リーマンショックで証券化商品自体の信用性が失われると、売りが売りを呼ぶパニックとなり、まさに金融恐慌へと突入した。
CDS/クレジット・デフォルト・スワップ
CDSは、取引相手が破綻・債務不履行を起こした場合、売掛金や融資の元本を保証してくれる一種の保険のような金融商品である。本来はリスクを回避するために開発されたものだが、世界中で乱発され、対象企業とは無関係の第三者が高利回りの金融商品として売買するケースが増えた。
しかし、金融機関や企業の連鎖破綻リスクが高まると、CDSの引き受け手が保証金の支払いに応じきれなくなるのではという懸念が広がった。CDSでリスクを回避したつもりの金融機関や企業も、貸倒引当金の手当てがつかず、連鎖破綻の危険性が一気に高まった。
過剰な消費の背景
米国の住宅バブルでは、個人が直接、現金の形でバブルのうまみを享受する手段が増えていた。典型的な例が、住宅ローンを利用した現金化だ。「ホームエクイティ・ローン」と呼ばれるもので、自宅の担保評価額が住宅ブームで上昇したことを受けて住宅ローンを増額して借り換え、その増額分を現金化して消費に回すという手法が一般化していた。この構図が崩れたことで個人消費が一気に冷え込んだ。
余剰マネー
金融バブルを生んだのは、世界的な低金利が生み出した余剰マネーだった。とりわけ日本の超低金利と米国の金融緩和で膨張した資金は、世界各国の株や、債券、不動産など、あらゆるものに流れ込んだ。
円キャリー・トレード
90年代以降のデフレ不況脱却を目指して、日銀はゼロ金利政策をとり、市場に資金を供給し続けた。さらに50兆円近い規模の円売りドル買い介入を踏み切った。
介入に使った円のうち一定の資金を市場から吸収しなかったため、金融緩和の効果も生んだ。円は投機マネーの「タネ銭」にもなった。投資家は、超低金利の円を借り、利回りの高い国の通貨に換えて利ざやを稼ぎ、さらに株や債券など金融商品、不動産、原油などの商品を買うという「円キャリー・トレード」が盛んに行われた。
そして時は過ぎ、リーマンショック、ユーロ危機へと続くのであった。
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