ようこそ、大人の遊艶地へ!
ラブホテルというのは、実に不思議な空間である
ラブホテルとは、男と女が愛を営むだけにある。この様式は日本固有の文化なのか。海外には存在しないのだろうか。それは知る由もないが、あまり聞いたことはない。想像するに、たぶん日本独特の住・生活環境から発生したものに違いない。
戦後日本は、豊かになったとはいえ、住環境は欧米に比べれば貧弱そのものだった。夫婦二人暮らしならまだしも、子供が出来て大きく成長してくれば何とも不都合が生じていた。夫婦が愛の営みをする場所さえなかった。
そこで、ラブホテル(昔は連れ込み宿)である。便利なものがあるじゃないか、という訳で需要と供給のバランスが保たれたという訳だ。昨今、この手の専門ホテルは減少傾向にあるようだが、その代わりをシティホテルが担っているだけのようだ。
それはさておき、昨今のラブホテル事情であるが、一昔前とはずいぶんと違っているようである。シティホテル化が進んで面白みが欠けているようだ。この本に出てくるラブホテルにある、大人の遊園地のような一種の洒落が通じなくなっているようである。それは、何でも規制によるところが大きいといわれている。
昭和のラブホテル業界人の考えは、まことに面白いことこの上ないのだが、時代の流れとはある意味残酷なものだ。この本の出版社からのコメントに、「愛とエロスのアート建築遺産」とあるように、よもやラブホテルが遺産になろうとは…。
ラブホテル・コレクション
昭和の残影が色濃く残るラブホテルは、大人の遊艶地だった
「ラブホテル・コレクション」は、映画監督の村上賢司が自信をもってお勧めする、全国33カ所の極上アートのラブホテル群を紹介したビジュアルガイドブックである。
村上は、この本を執筆する前の2009年、都築響一の『ラブホテルーSatellite of LOVE』(アスペクト)に掲載された物件を中心に、関東と関西にある貴重な客室だけを記録した『ラブホテル・コレクション/甘い記憶』というドキュメンタリー映画も発表している。
その後、この本の企画が立ち上がり、トータルすると5年ほどの歳月をかけて出来上がった力作である。きっとこの本は将来、失われた記憶を残す貴重な本になるに違いない。
ラブホテル・コレクション 村上賢司
そこは大人しか入れない、しかし遊園地のようなデザインの部屋の中で円形のベットがクルクル回る、かなり変だ。でも面白そうな空間。それがラブホテルであった!!
Satellite of LOVE―ラブホテル・消えゆく愛の空間学
愛を彩ったラブホテルの空間は、もはや消えゆくのみか
村上に影響を与えたのが、都築響一が編集を担当し出版された「Satellite of LOVE―ラブホテル・消えゆく愛の空間学」という本である。
都築響一は、マガジンハウスでブルータスに在籍していたはずであるが、いまでは実に多方面で活躍している。美術評論、流行や風俗のルポ、さらには空間演出のプロデュースまでその幅は広い。90年代初頭の湾岸ブームを先駆けた複合施設の「エムザ有明」の企画・プロデュースなども担当している。
(書籍の紹介より)
回転ベッド、鏡張りの部屋、ガラスの浴室・・あの懐かしきスタイルのラブホテルが、いま絶滅の危機に瀕している。風営法改悪によって、もうすぐ体験できなくなる、うれし恥ずかし愛欲空間。これが日本のオリジナリティだ!。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット…。クリエイティブな遊びごころにあふれたラブホテルは、いま急速に姿を消しつつある。昔ながらのインテリアをそなえたラブホテルをカラー写真で紹介する。
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