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■社会|英国の離脱はEUを破綻に導くか その影に潜むものとは何か

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英国のEU離脱は、仕掛け人の想定を超えた

 英国のEU離脱の影響は、日本の株価、為替の動向に顕著となって表れている。欧米、国内のマスコミ論調は、概ね英国の衰退とEUの混乱を予測している。そして、その影響は欧州各国へ波及していくとしている。

 具体的には、来年に行われるフランスの大統領選で、極右のルペン候補が勝った場合には、EU離脱の国民投票を実施するといわれている。

 その他にも、オランダ、スウェーデン、ハンガリー、イタリア、ポルトガル、オーストリアなども反EU、反グローバリズムの政党が、国民投票を呼びかけている。スペインでは、カタルーニヤ自治区の独立の気運にも火を付けたようだ。

 英国は、はたしてEU離脱をどこまで想定していたか。EU=欧州統合の夢は、同床異夢だったのか。英国の真の意図は何処にあったのか…。

英国は、いまでも大英帝国のままなのか

 かつて世界の覇権を握っていた大英帝国の時代には、その領土(植民地含む)からは、陽が沈むことは無かったといわれていた。欧州大陸から海を隔てた小さな島国である英国が、どーやってそこまでの帝国を築き上げたか。

 そこには、ある秘密の法則があったといわれる。そのうちのひとつが、敵(狙いを定めた他国)の弱点を握り、それを材料に敵の分断化を図り、内政の混乱を生じさせて、その隙に国を乗っ取る(植民地化)というものである。

 端的にいえば、「狙った国家の内部分裂を誘発させて、敵の結束を削いだ上で勝機を生み出す」という手法である。

 この手法は、インドで遺憾なく発揮された。インドの紅茶や繊維、アヘンなどに目を付けた大英帝国は、インド特有のカーストという身分制度を利用して国内の分断化を図った。そして、自国民同士が戦い合うように仕向けていった。

 そして、その混乱に乗じてインドを丸ごと自国のものとしてしまった。

 このような手法を実行するには、情報の確かさと、敵を誑かす手練手管が必要である。大英帝国は、群雄割拠する欧州のなかでその手法を研ぎ澄ましてきた。外交とは=術中に嵌らせること、という手練手管を磨いてきた。

 それが、後の英国情報局であるMI5やMI6にも繋がっているのは言うまでもない。ジェームス・ボンド007は、大英帝国の申し子でもある。

 したがって、現在の英国でも、大英帝国時代から培ってきた手練手管の手法は脈々と受け継がれている。二枚舌、三枚舌は言うに及ばず、陰謀も辞さない。それが、英国という国の伝統と思って間違いないだろう。

 そのような英国が、EU離脱に至るには深い背景があるはずだ。巷でいわれている、移民問題とナショナリズムだけが、その理由とはとても思えない。

 ある国際情報サイトでは、英国のEU離脱に関して、陰謀論的な解釈を紹介していました。それが実に興味深く、まるでミステリー&サスペンスの映画のような内容でした。それを参考に、英国のEU離脱の背景を以下に紹介していきます。

インドへの道(ちくま文庫) エドワード・モーガン・フォースター
東洋と西洋、支配民族と被支配民族がいかにして結びつくことができるかを問うフォースターの代表作。デヴィッド・リーン監督により映画化され、いま異文化との摩擦、融和の問題に直面する現代日本で重要なテーマを提起する不朽の名作。

英国は、自ら仕掛けた罠に嵌ってしまった

 第2次大戦後、米国の提唱で独仏が国家統合し、欧州を安定した強い地域にする計画がEECとして進められた。冷戦終了後、東西ドイツは統一し欧州統合も加速化していった。92年マーストリヒト条約が調印されて、EUがスタートした。

 英国は、ECC時代から参加しているが、国家主権の剥奪には拒否し続けていた。欧州大陸を安定化させたいドイツとフランスに対して、英国は欧州大陸の国が強くなることに脅威を感じていた。

 それは、過去の欧州大陸の強国は、必ず英国に侵略の矛先を向けたからであった。それを回避するために、英国は500年前から欧州各国どうしの連携を拒み、対立させるように仕向けていた。

 そのために英国は、全欧州に情報網を持つユダヤ人を国家中枢に組み入れ、外交システムの基礎を作り上げていた。その外交術は、口で協調や融和を語りつつ、その実、敵を破綻させるのが目的となっていた。

 かつての覇権国である英国は、新しい覇権国のアメリカに、戦略を伝授すると称して、密かに「軍産複合体」を作り上げて、アメリカの戦略立案体制を乗っ取っていた。そして米ソ冷戦構造を演出し、欧州大陸を米英の支配下に置いた。

 しかし、やがてアメリカは冷戦構造に嫌気が指して、それを終わらせようとする動きが顕著となっていた。そして、90年前後の冷戦終結、東西ドイツの統一という流れとなり、英国の思惑とは違う方向へと進んでいた。

 90年代以降、EU統合は加速化していった。それに対し、英国は、東欧やバルカン諸国のEU加盟を強く支援し続け、EUが不安定な周縁部を持つ脆弱な機関になるように仕向けていた。

 その結果、2011年前後からギリシャ危機、難民危機、パリのテロなど、周縁部の脆弱性がEU全体の混乱や弱体化につながる事件が続発し、統合とは反対方向の各国ごとのナショナリズムが勃興し、統合推進どころでなくなった。

 EUの国家統合が成功すると、それを主導するのは欧州最大の経済大国であるドイツであり、事実上ドイツが全欧を支配するドイツ帝国の誕生となる。それを阻止したい英国は、EU内部から破壊工作をしていたと言っていいだろう。

 欧州大陸の各国のナショナリズムを扇動して諸国を反目させて漁夫の利を得るのは、18世紀からの英国の戦略だ。その扇動のために英国はジャーナリズムを発達させ、各国で政府を批判する「ジャーナリスト」を崇高な存在に仕立てていた。

国民投票は、英国のEU破壊工作か

 難問を抱えながらもドイツ、フランスは欧州統合を推進し続けた。さらに、各国の主権を剥奪し、最終目的である欧州を連合国家にすることを加速させていた。

 それに危惧を覚えた英国では、統合するならその前に国民投票せよという声が大きくなり、キャメロン首相は2017年末までに行うと約束した。

 このとき、密かに英国ではひとつの戦略があった。それは、EUに残留するかどうかの国民投票をすれば、他の国でもそれに期待する動きが顕著となるだろう。たぶん、フランスでは間違いなくそれが大きな動きになるはずだった。

 実は英国より、フランスの方がEUに対する反感が強かった。それを見据えて英国は、国民投票に踏み込んだ。そして想定では、英国は僅差でEUに残留し、飛び火したフランスでは離脱という結果になるはずだった。

 国民投票で英国支配エリート層は、EUを内部から崩壊させることを目論んでいた。その証拠に、投票日までのあいだ国家エリート、全マスコミは前述した筋書き通りに残留することを是とするキャンペーンを行っていた。

 英国は残留という結果が既定路線であった。国民投票という事実と、反EUムードを欧州各国に煽ることができればよかったのである。

 ところが、あにはからんや。移民問題などに端を発する反EUナショナリズムが思いの外、拡大してしまった。その結果、エリート層が描いた筋書き通りとはならず、EU離脱が現実となってしまった。

 反EUとナショナリズムは、結局は火付け役の英国が逃げ切れず、ますます強く燃えてしまった。 それはEU各国も他山の石と見ることはもうできない。

 一方、英国は本当に離脱するか、それが疑問視されている。英政府がなかなかEUに離脱申請を出さず、先延ばしにしている間に英独間で新たな協定が結ばれ、いつの間にか「やめるのをやめる」事態になる可能性も取りざたされている。

 以上、「英国のEU離脱」に関する背景を要約してみました。より詳しいことは、以下のリンク先でご覧下さい。

英国が火をつけた「欧米の春」(田中宇)
 6月26日に行われたスペインの総選挙では、反EU(反財政緊縮、反財政統合)を掲げる左翼のポデモスが、数日前までの躍進予測に反してふるわず現状維持にとどまり、対照的に、既存エリート層の中道右派与党のPP(国民党)が事前の減少予測に反して拡大(14議席増)した。

 英国の投票直後は、欧州大陸諸国で反EU政党が躍進し、各国で国民投票が行われて相次いでEU離脱が決まり、EUが崩壊するというシナリオが取りざたされた。ジョージ・ソロスも「もうEUは終わりだ」と決定的な感じで語る文章を得意げに発表した。FTの軍産系記者も似たような記事を書いている。だが、スペインの選挙を見ると、現実がそんなに一直線に進まないことが見てとれる。

 英国のEU離脱自体、英政府がなかなかEUに離脱申請を出さず、先延ばしにしている間に英独間で新たな協定が結ばれ、いつの間にか「やめるのをやめる」事態になる可能性がある。EU上層部では、メルケル独首相が、英国と新たな協定を結ぶことを推進している。EU大統領のユンケルらはそれに不満で、英国を早くやめさせて独仏で勝手にEUの方向転換を決められるようにしたい。

 英国の支配層にとって、EU離脱はシナリオ通りではなかったが、海千山千のかれらがこのまま黙っている訳はない。きっと、いまごろは頭を寄せ合って策を弄し、何かを仕掛けてくるに違いないと思われるがいかに。

イギリス国旗 ユニオンジャック

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