1920年代〜1930年代の流行に関する考察
流行とは、鵺(ぬえ)のようなもの…。実態はなく、追いかけると逃げていく。
「時の流れに身を任せて幾年月、思えば遠くに来たもんだ」などと時代の変化を例えますが、「時代の背景は変わり、時は流れても、それでも変わらないものもある」のは、間違いない。
時は流れても、変わらない「モノ・コト」などを、松尾芭蕉は「不易」として表しました。流行に関して何かを探すことは、別の意味でいえば「不易」を探ることと同義であると考えられます。逆もまた真なりと言うように…。
「不易」=(いつまでも変わらないこと)
流行とは、表層的には、衣・食・住という人間の営みを形成する生活様式全般に渉るもの。深層的には、思想的、社会情勢などを含みます。
1)Mode、Trend、Fad、Fashion
流行(りゅうこう、はやり)は、ある社会のある時点で、特定の思考、表現形式、製品などがその社会に浸透・普及していく過程にある状態を表していること。
2)松尾芭蕉の俳諧理論において
「時とともに移ろうこと」を意味する。対義語は「不易」(いつまでも変わらないこと)。
画像引用:https://ameblo.jp/ayumu1964/entry-12226944948.html
流行の神話 海野弘・著
ほとんどの流行は、一過性で終わるのが宿命である。されど、その流行は消えてなくなったわけではない。人々の記憶の底にそっと仕舞われて、またいつの日か世に現れてくる。それが「流行の神話」である。
海野弘著の「流行の神話」は、1976年に第1版が出版されている。当方は、この本を80年代のどこかで出会い、その内容にとても魅入られたのを記憶している。
「流行の神話」というタイトルに惹かれて購入したと思うが、定かではない。流行という、軽く扱われがちな現象に焦点を当て、それを魅力的に解説している。
たぶん、流行(風俗)を対象とした評論のはしりだったと思う。著者は、この本の出版当時は平凡社の編集者だったはずであるが、確かではない。なお、この文章の冒頭に書いたのは、海野氏の言葉ではなく、当方の感想である。
流行とは、何だ!
「流行」の語源は、「物事が河の流れる様のごとく世間に流布する」意味を表す漢語。徳の広まることや、はやり病(疫病)が広まることを指した。日本においては『流行』は動詞の『はやる』と混同され、使用されるようになった。(辞書より)
流行る、この意味を要約すれば「ある社会において、特定のモノやコトが、まさに河が流れるが如く世間に広く浸透していく様を表す」ということである。また、ファッションとは、ある時点で広く行われているスタイルや風習のことであり、特に流行している服装や装いを指す場合に使われる。
現在、ほとんどの場合、流行とファッションは同意語として扱われ使用されることが多い。しかし、流行とは、服装の流行り廃りだけを表す言葉ではない。
病気も流行するのである。このように流行の持つ意味の範囲は、案外広く、そして深いのである。
さて、ここからが本題である。上記したことは、この本とはあまり関係がないことである。流行ということに対し、個人として感じたことである。あしからず。
1920年代の流行とは…
1920年代といえば、ジャズエイジと称される。アメリカでは空前絶後の好景気に湧いた時代である。それは、日本のバブルが矮小化して見えるほどであったようだ。この時代をジャズエイジと命名した作家スコット・フィッツジェラルドは、1919年のメーデーから1929年の経済的破綻までをそう呼んだ。
また、スコットは次のように云っている「政治にはまったく興味がないのがジャズエイジであった。そして何の時代かと云えば、奇跡の時代であり、芸術の時代であり、過剰の時代であり、風刺の時代であった。」(フィッツジェラルド/ジャズエイジのこだま、1931年)
アメリカの1920年代=狂騒の時代
なにもかもが過剰の時代、端的にいえばどんちゃん騒ぎに嵩じた時代である。この当時の女性ファッションは、それまでの19世紀的女性像から解放され、自由な女性が闊歩しはじめた時代である。ショート・ヘアー、ショート・スカート、胸も腰もぺしゃんこで足を出したボーイッシュなスタイルである。
彼女たちは、「フラッパー」と呼ばれた。彼女たちは、たばこを吸い、ジンやコーン・ウイスキー入りのコーラを飲み、チーク・ダンスをして、小道沿いでペッティングをした。
新しいモラル、さらには新しい生活様式が誕生していたのである。
この時代、ファッション(衣装として)が解放されたように、女性の性も解放されたのである。このような傾向は最初は、若い層が中心となっていたが、それを見ていた大人たちも仲間入りするようになった。
若者から中高年まで人生を謳歌することに夢中になったのである。それが、1920年代の流行であった。そして、それは1929年の株価大暴落によって一気に幕を閉じた。
1930年代の流行とは…
1929年の経済的クラッシュを経て迎えたのが、1930年代である。この30年代は、退廃とロマンの時代であったようだ。退廃は、経済的苦境から立ち直れていないことを背景としている。
一方、ロマンは、この時期に花開いた文化に基づいている。
「1930年代ファッション」というファッション用語があるように、この時代の衣装の華やかさにはロマンティシズムが溢れていた。そして、相乗効果を高めるかのようにスターがきらびやかに色を添えたのである。
ディートリッヒ、ガルボ、ハーロー、ヴィヴィアン・リーなど名だたるスターが現れた映画の黄金時代であった。そして、20年代のボーイッシュからグラマーへと流行は変わっていた。
30年代は、女らしさ(フェミニン)を強調する時代となっていた。
もうひとつの傾向である退廃であるが、これは29年の経済クラッシュが影響して苦境にある人々が多数いたことに端を発している。それによって、ボニー&クライドに代表されるような犯罪者が多く発生したのである。
これが、退廃的空気を助長させたのである。このように30年代は、ハリウッドに代表される華やかなファッションと犯罪者に代表される退廃が結びつき、独特の退廃的ロマンティシズムを漂わせていたのが特徴である。
そして、1939年には再び戦争へと突入していくのであった。
画像引用:https://www.buyma.com/buyer/4899597/post/130154.html
参考文献:「流行の神話」海野弘・著
流行の神話―ロールスロイスとレインコートはいかに創られたか (光文社文庫)
以下は、海野弘著「モダン都市東京」
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