建築費の試算が3000億円で、やむなく縮小らしい!
新国立競技場設計案 ザハ・ハディド
建築費が掛かりそうなのは、事前に判っていたと思うが如何に
新国立競技場の設計案に対し、その建築試算が3000億円であることが発表された。大きく予算を超えることから、施設規模の縮小が検討されるようだ。しかし、これは日本の建築家や構造の専門家などからさんざん指摘されたことである。このデザインを、1300億円という予算で建築するのは到底無理だと云う意見が多かったはずである。
なんでも、大きな曲線を描くアーチを支える構造を実現するには、地中深くまで基礎を築く必要があると何かで書かれていた。
そして、それを考慮すると当初の予算を大きく上回るだろうと指摘されていた。建築試算が発表された事でそれが実証された訳である。なんと、予算の倍以上である。公共建築であるから、実際に建築がはじまるとさらに費用が加算されるのではないか。これまでの公共建築で予算通り出来たという話はあまり聞いた事が無いからだ。規模を縮小することで周辺施設との距離感も保たれて環境にもいいのではないか、と思う次第である。
個人的には、ザハ・ハディドの設計案は嫌いではないけれど、いかんせん周辺との距離感がなく敷地一杯にとてつもなく大きい施設が建つのは、バランスが悪くないかと気になっていた。著名建築家・槙文彦氏が反対表明したのは良かった。規模縮小で槙文彦氏の言うような環境が保たれるかもしれない。
しかし、今回の設計案の選定委員長であった安藤忠雄氏は、何を考えていたのか。彼は、周辺環境を考慮した設計で定評があったと思うが如何に。
望京SOHO 北京 ザハ・ハディド 現在建築中
安藤氏の建築理念と今回の設計案では、乖離があるのではないか
安藤氏の原宿・表参道ヒルズなどは、地上部分を低く抑えつつ、足りない部分は地下に建設するという手法であった。これなどは、周辺環境に配慮した設計案であった。もっとも立地が表参道であり厳しい規制があったおかげかも知れないが。それでも、彼は他の設計案でもいくつか環境を配慮した設計案を出している。例えば、大阪・中之島公会堂のプロジェクトでは、外部の歴史的建造物は残して、内部に新しく建造物をこしらえるという手法等を発表している。
また、イタリアのベニスでも美術館をやはり歴史的建造物を残して、内部設計のみを行っている。このように安藤氏は環境を大事に設計してきたと思うが、何故、今回の新国立競技場では、ザハの案を推したのか疑問である。そのデザインは確かに斬新でいいが、周辺環境という点では安藤氏の理念に反する気がする。何か、別の関係式が働いたのかもしれない。
個人的な野望か、それともザハの案を通す事が最初からのシナリオだったか。設計案の選定委員は、専門家であるはずだから、そもそも予算内で施工できるかどうか想像ができたはずと思うが、違うだろうか。何か、すっきりとしない今回の新国立競技場のコンペであった。試算が出てからの設計案修正で、選定委員は責任を取るのだろうか。今後は、これにも注目したいと思うのである。
表参道ヒルズ 安藤忠雄
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