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■映画|ブレードランナー SF映画の金字塔

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生への渇望、それは記憶の彼方に!

ブレードランナー、酸性雨が降り注ぐ近未来世界

映画「ブレードランナー」は1982年に公開された、リドリー・スコット監督によるSF映画の大傑作である。「2001年宇宙の旅」と並び称されるほどの作品と云っても過言ではない。卓越した映像センスと演出により、それまでにないまったく新しい近未来世界の構築に成功している。

この作品の登場以後、ブレードランナー的世界観がSF映画の潮流となった。

現在では当たり前となった、薄汚れて退廃感漂う近未来世界というSF映画の世界観を30年前に創造したのである。その影響力は、映画だけでなく、小説、コミック、アニメ、ゲームなど幅広いメディアに広がった。原作は、フィリッップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」である。

しかし、その近未来世界は映画のオリジナルである。

現在、リドリー・スコット監督は、続編となる「ブレードランナー2」を製作準備中である。しかし本当に実現するのか。その期待は高まる次第である。

ブレードランナー|ストーリー

2019年、地球環境の悪化に伴い、多くの人類は地球を離れ宇宙へと移住していた。酸性雨が降り注ぐ地球に住む人類は、一部の高層ビル群に寄り添うように住んでいた。

宇宙での開拓事業では、「レプリカント」と呼ばれる人間そっくりの人造ロボットが人間に変わって従事していた。それは、ほとんど奴隷同然に酷使されていた。

「レプリカント」には感情がないはずであったが、しかし、数年経つと感情が芽生え始めることが分った。それにより、不満を感じるようになったレプリカント達は度々反乱を起こすようになった。そこで彼らを取り締まり、そして抹殺する役割を担ったのが、専任捜査官「ブレードランナー」であった。

タイレル社の製造した、レプリカント「ネクサス6型」の男女6人が人間を殺害したうえ、シャトルを奪い地球に潜伏中であることが判明した。リタイア中の元捜査官デッカード(ハリソン・フォード)は、その有能さから元上司のブライアントに無理矢理、現場復帰させられる。

そして、脱走したレプリカント達を抹殺するため捜査を開始する。

脱走したレプリカントが住む部屋を捜索中、大量の写真を発見する。レプリカントは、成長の記憶がないので写真で補うことで生を実感しようとしていた。デッカートは、脱走したレプリカントをひとり、またひとりと抹殺していく。

最後に残ったリーダー格のレプリカント、バティ(ルトガー・ハウアー)との対決が待っていた。デッカートは、バティとの対決の最中、彼らが地球にやってきた真の目的を知ることになる。バティは、高層ビルの屋上から落下したデッカートを助け上げてやった。

そして自身の寿命が近づいたことを悟り、鳩を愛でながら静かに息を止めた…。


2019年、ロスアンジェルスの景観


強力わかもとの電飾広告と空飛ぶスピナー

カフェバーで観たブレードランナー

スピナー、空飛ぶクルマ

ブレードランナーを観たのは実はカフェバーであった。

正確には、音声のない映像を眺めていた。漆黒の闇にキラキラと光る高層ビルの明かり、そして煙突?から吹き上がる炎のなかを静かに飛んでいくスピナー(空飛ぶクルマ)、酸性雨が降り注ぐ混沌とした無国籍風な街並のなかを歩く傘を差した大勢の人々など、そうした映像を観て衝撃を受けたのである。

そして、さっそく名画座へと足を運んだのである。したがって公開時には観ていない。もっとも、不入りのためすぐに上映されなくなったので公開期間は短かった。

ビデオが発売され、カフェバーで映像が流されて、ようやくこの映画の画期的な新しさに気付き始めたのだ。その後、名画座、ビデオ、DVDと変遷したが、いまでも繰り返し観ている。公開が「ET」と重なったことが不入りの原因とされるが、何よりマーケティングの失敗につきると思う。

公開当時のキャッチコピーが「2020年、レプリカント軍団、人類に宣戦布告!」というのである。なんだ、これは!。このセンスの無さには飽きれるしかない。しかし、年々その評価は高まり、「2001年宇宙の旅」と並び称される金字塔にまで上り詰めてきた。これは、至極当然の結果である、と思うのである。

美術と特殊効果


ビルの上に降り立つスピナー

工業デザイナーのシド・ミードが重要な仕事をしている。当初、カーデザインの担当として雇われたらしい。しかし、彼の卓越した才能、技量にスコット監督は魅了されて、車両以外のインテリア、鍵、ハンターの銃、ベッド、パーキングメーター、ショーウィンドー等のセットや小道具のデザインを依頼する。

さらに背景となる建築、都市の外観、列車や駅、コンピュータ等のインターフェースに至るありとあらゆるデザインを担当することになった。

街中の至る所で見かける変な日本語のカンバンやネオンは、スコット監督が新宿歌舞伎町を訪れたときヒントを得たようである。タイレル社のビルは、美術セットとして作られた。案外小さいものであり、なかには電球がセットされていた。いまなら当然、CGであろうが当時は望むべくもない。

しかし、その効果は映像を観れば分るとおり、相当に味わい深い出来である。担当者の力量が確かなものである証拠だ。効果担当は、ダグラス・トランブスである。

リドリー・スコット監督自身、アートスクール出身であり、ヴィジュアルには相当なこだわりを見せる。特典映像だったと思うが、デッカードの住む部屋での撮影中、アングル上どうしても気になり、自ら部屋(セット)の一部をチェーンソーで切り大きな穴を開けたそうである。

市民ケーン撮影時のオーソン・ウエルズを彷彿させる出来事である。(ウエルズは、カメラ位置が気に入らず、床に穴を掘ってセッティングした)

ブレードランナーとレプリカント


脱走したレプリカントのリーダー

「ブレードランナー」という名称は、SF作家アラン・E・ナースの小説「ザ・ブレードランナー」(1974年)において、「非合法医療器具(Blade)の密売人」として登場する。この小説を元にウィリアム・S・バロウズは小説「Blade Runner (a movie)」(1979年、訳題『映画:ブレードランナー』)を執筆した。

また、「レプリカント」については、原作の「アンドロイド」が機械を連想させると考えたスコットが、ファンチャーの脚本を改稿させるために雇った脚本家デイヴィッド・ピープルズに別の名前を考えるように依頼。ピープルズは、生化学を学んでいた娘からクローン技術の「細胞複製(レプリケーション)」を教わり、そこから「レプリカント」という言葉を造語した。(参考:ウィキペディア)

ロケーション


対決の舞台、ブラッドベリ・ビル

デッカードの自宅シーンに使用されたのはロサンゼルス郊外にあるエニス・ブラウン邸(フランク・ロイド・ライト設計)であり、本作と同じリドリー・スコット監督作『ブラック・レイン』においても、親分の菅井邸として使われている。コンクリートブロックによるアステカ風?の模様に特徴がある。

タイレル社の技術者J.F.セバスチャンが住むアパートであり、デッカードとバディの対決の場所となったのが、ロサンゼルスのダウンタウンにあるブラッドベリ・ビルである。

1893年に建築され、アメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されている。映画やTVドラマのロケ地としても有名だが、本来オフィスビルであるため本作の撮影は深夜に行われた。

製作の裏側


腕利きのブレードランナー、デッカード(ハリソン・フォード)

スコット監督と主役のハリソン・フォードとの関係はうまくいってなかったようである。撮影中、意見が異なることが度々あったようだ。また、実質撮影が終わった後も、追加撮影で呼び出されてハリソンはさらに反発したようだ。しかし、スコット監督は良く粘ったものである。

さすがである。ちなみにハリソンはいまでも、スコット監督の行いに根を持っているようである。「ブレードランナー」に関して、多くを語ろうとはしない。

余談であるが、映画を製作した会社の社長アラン・ラッド・ジュニアは、西部劇スター、アラン・ラッドの息子である。また、20世紀フォックス時代には「スター・ウォーズ」を重役陣の反対を押しきって製作し大成功を収めた。後にMGMの社長となるが、理解のないオーナーに苦しめられ大変苦労することになる。

■ブレードランナー|Blade Runner

<スタッフ&キャスト>
監督:リドリー・スコット
脚本:ハンプトン・ファンチャー、デイヴィッド・ピープルズ
原作:フィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
製作総指揮:ブライアン・ケリー、ハンプトン・ファンチャー
出演者、ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング、他
音楽:ヴァンゲリス
撮影;ジョーダン・クローネンウェス
製作会社:The Ladd Company
配給:ワーナー・ブラザーズ
公開:1982年6月25日/米 1982年7月3日/日本
上映時間:117分

<主要キャスト>
リック・デッカード/捜査官:ハリソン・フォード
ロイ・バッティ/脱走レプリカントのリーダー:ルトガー・ハウアー
レイチェル/最新型レプリカント:ショーン・ヤング
ガフ/捜査官:エドワード・ジェームズ・オルモス
ブライアント/捜査官のボス:M・エメット・ウォルシュ
プリス/レプリカント:ダリル・ハンナ
リオン/レプリカント:ブライオン・ジェームズ
ゾーラ/レプリカント:ジョアンナ・キャシディ

<参考文献>
映画DVDの解説、町山智宏「ブレードランナーの未来世紀」、ウィキペディア
以下は、町山智宏「ブレードランナーの未来世紀」、「ブレードランナー」ファイナルカットのDVD。

〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀 (映画秘宝コレクション)
〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀 (映画秘宝コレクション)

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