近未来のコンビニでは、全自動化が当たり前となる?
■コンビニは、看板を外せば見分けが付かない
消費増税後は、どの小売業も経営が苦しくなった。アパレルでは、一部の高級ブランドを除けば、低価格路線のブランドしか生き残れなくなっている。日常生活品を扱うスーパーなども同じくである。最近では大手流通を避けて地元に密着したスーパーなどに顧客の足が向いているとか。
そのようななかで、唯一出店攻勢を掛けているのがコンビニ業態である。もはや全国津々浦々に出店したはずと思ったが、セブンイレブンはまだ余地があるとばかりに、これから出店攻勢にでるそうだ。競合他社は、果たしてその動きにどう対処していくのか。コンビニの市場競争の行方はいかに。
ところで、コンビニ業界はセブンイレブンが、頭ひとつ抜きでた状態にあるのは言うまでもない。それを承知のうえでコンビニ各社を比べてみると、実はたいして差がないことに気が付く。(売上は別として)
セブンイレブン、ローソン、ファミマ、その他コンビニの商品構成は、どこも似たり寄ったりである。コンビニとはそういうもんだといえば、それまでであるが。それにしても、商品、売り方、店舗の形態とまるで申し合わせたように同じだ。違っているのは、看板ぐらいだろう。
コンビニは、日常品(コモデティ)である食品と日用品の品数を売れ筋に絞り、想定顧客に近い立地に多数出店するという、いわば利便性を訴求する業態である。したがって、商品構成や売り方がおなじになるのは当然かもしれない。
しかし、他の業態、例えばアパレルでは他の店舗とは違う商品、または品揃えをセレクトし差別化を図ることが当たり前である。また価格にも差異がなければ、顧客にも訴求しないし、存在する意義もない。
ところが、コンビニはどこでも8〜9割ぐらいはおなじ商品構成であり、店内レイアウトやレジの位置、人員の配置まで一緒である。差異があるのは、店舗の看板が違っているだけと言っていいだろう。
コンビニは価格訴求はしないから、なおさらのことである。とにかく、店内に入ってみればどこも一緒、それがコンビニである。昨今では、プライベートブランドやコーヒー、ドーナツなども導入しているが、これまた一緒という具合だ。
細かい部分で違うのは、当然知っている。PBや弁当などの商品開発、サービスの拡充に多少の違いはある。しかし、店舗形態、運営方法、商品構成が共通するなら、それはもはや自動販売機とおなじである。
だったら、コンビニも全自動化(または自販機化)してもおかしくはない。いや、コンビニほど全自動化に適した業態はないかもしれない。
何故なら、店舗は比較的小さく、商品構成は絞り込まれているからだ。全自動化には打ってつけと言っていいだろう。店舗まるごと自販機化する。それは近未来のコンビニの姿かもしれない。
しかし、顧客がそれで満足するかどうかは別であるのは言うまでもない。
自販機化されたコンビニに顧客は満足するか
■am/pmのコンビニ自販機化
実は上記したようなことは、すでに試みられていたのである。いまから十数年前であるが、コンビニを自販機化した実験店舗を視察したことがある。am/pmというコンビニ運営会社が、それを行っていた。場所は、たしか千代田区だったように記憶している。
am/pmは、すでに存在していない(たしか牛角の運営会社に買収された)が、元は共同石油(現ジャパンエナジー)の新規事業であった。コンビニの自販機化は、たぶんガソリンスタンドへの併設を目論んで開発されたと思われる。
とにかく、そのコンビニを自販機化したものは、外観は通常のコンビニの間口と同じくらいあった。店内に入ると奥行きはあまり無くて、壁一面にオフィスによくある食品自販機のようなものが並んでいるだけであった。
実験店舗ということもあって、仕組みを見せるために奥(バックヤード)が覗けるようにガラス窓が設けられていた。
自販機が並んだ壁の向こうでは、ベルトコンベアーのようなものが何本かありそれが自販機に繋がっていた。一番奥には棚?があり商品が在庫されていた。たぶん、補充は完全自動化はされていなかったはずだ。人が商品をベルトコンベアーまで運んでいたように思うが、たしかではない。
感想としては、まだ開発途上であり、多くの自販機に商品を補充する機械を取り付けてみましたというレベルの、単なるでかい自販機でしかなかった。
その後、am/pmがこのコンビニ自販機を拡販したという話しはあまり聞こえてこなかった。たぶん、コストが高くついて、たとえ導入しても損益分岐点が悪過ぎたのかもしれない。自動化で人件費が削減できても、売上が見込めなければ本末転倒だ。なによりも扱える商品数が少なかったのが致命的であった。
ちなみに当方は、余程でないかぎり利用はしないに違いないと思った。このコンビニ自販機は、いま何処かで稼働しているだろうか。あまり見かけたことはないがいかに。
コンビニの顧客満足は、人的サービスの差でしかない?
■顧客満足は、商品のみならず
最近になってコンビニ自販機を思い出したのには訳がある。当方の住む場所から徒歩圏内(10分以内)に、コンビニが5店舗あります。セブン(2店)、ローソン、ファミマ、ミニストップである。これを日替わりのように各店舗を回っているうちに、ふっと思ったのである。あれ、ここはどこだったかと。
それはまるでデジャブのような感覚であった。多少大袈裟ではあるが、そのように感じたことがあった。店内はどこも一緒じゃねーか、レイアウトはこれしかないのかよ、コンビニは店舗形態がおなじでなければいけない、そんな業界の約束事でもあるのか、と不思議に思ったほどである。
それでも、唯一違っているものはあった、それはコンビニで働いているスタッフの人達である。経営者なのか、パートなのか分からないが、コンビニによって日々スタッフが変わる店舗と、ほぼおなじスタッフの店舗があった。
当方は、コンビニで顔なじみになる趣味はないので、いつも店舗を変えている。しかし、いつのまにか遠ざかるようになったコンビニもある。その理由は、スタッフのレジ清算やちょっとした質問への対応の仕方、店内、店舗周辺の雰囲気(清潔感など)等にあった。
とにかく、それらを含めて顧客への気遣いがない店舗へは、しらずしらずのうちに遠ざかるようになっていた。
上記したようにコンビニ各社の間には、たいして差がある訳ではない。商品、店舗、どこも似たり寄ったりだ。(細かい部分は除く)顧客がコンビニを選択する理由は、「店舗の立地」と「人的サービス」の差しか残されていない。
個人差はあれど、「人的サービス」という気遣い(または心遣い)があるうちはコンビニも捨て難いものがある。しかしそれが失われれば、もはや完全自動化、もしくはロボットに変わってもらう以外に道はないだろう。
その方が、ある意味ではすっきりするかもしれない。これは余談であるが、一時期のマクドナルドではスタッフから笑顔が消えていた。「人的サービス」の優等生であったはずだが、いつのまにかそれは失われていた。
たぶん、経営陣が笑顔は無駄として効率化を優先したのだろう。マクドナルドは、あと一歩でロボット化したはずだ。違うか。
コンビニを革新するのは、ロボットか?
■ロボットに、気分のムラはない
ロボットならば、疲れしらずであり、気遣いもまたおなじくである。なんせ、インプットされた通りに繰り返すからだ。顧客は、ロボットであることを認識しているからとくに問題はない。それはロボットに心を求めていないからだ。
人間が運営しているうちは、どうしても「人的サービス」の差がでる。例えば、売り上げが悪い店舗では、落ち込んだ気分や雰囲気がスタッフにも伝播していく。そのあげく、100円、200円の顧客には思わずぞんざいな扱いをしてしまう。それが重なれば、顧客が他のコンビニにいくのは必然である。
ampmのコンビニ自販機はたいして魅力のないものであったが、しかし、未来のコンビニの姿を垣間みせていたことは間違いないと思われる。何故ならば、前述したような「人的サービス」の差を取り除くことができるからだ。
現在、大手コンビニ各社が自動化したコンビニを開発しているとは聞いていないが、はたしてそうか?。案外、近未来を見据えて密かに研究しているのではないか。その形態はどんなものになるだろうか、自販機の進化型か、またはロボットが人間に変わって「いらしゃいませー」と対応するのだろうか。
近未来の世界では、現在のような「人的サービス」を受けられるのは、ある種贅沢なことになるかもしれない。企業が、いま以上に人的介在をサービス業から取り除くのは必然のような気がする。なによりもコストを削減できるからだ。
ITやロボット工学がより進化していけば、おのずと辿り着く世界であるに違いないと想像できる。しかし、それが実現したときには、なんとも寒々しい光景となるに違いないと思われる。
それが、さらに発展してゆくと、やがては「人間なんていらねーんじゃねーの」という世界に行き着くだろう。なんだか、どこかで聞いたような気がするが。それは、「ターミネーター」の世界ではないか。いやはや。
後半は若干テーマとは外れて、行き過ぎた展開となったようである。長々と書きましたが、とくに結論に行き着くもことなく、この辺りでおしまいとします。あしからず。
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追記:コンビニの全自動化をテーマにしましたが、現在のコンビニを揶揄するつもりはありません。また、そこで働く人達にもおなじくです。とにかく、コンビニの仕事は端から見る以上に大変だと聞きます。
ちなみに、当方は「人的サービス」が無くなればいいとは思っていません。その逆であり、人間らしさの砦のようなものと考えます。昨今、介護の現場などで乱暴や暴言が問題になっていますが、そこではロボットの方がましかと思ってしまいます。
これは大変悲しいことであるのは言うまでもありません。
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