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■デザイン|ヒプノシスの創造力 ピンクフロイドと邂逅する

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原子心母の牛は、何を想うか!?

イメージとコンセプトの融合が想像力を掻き立てる

 かつて、音楽のアルバムデザインが、大きな話題を呼んだ時代があった。いまでは、それも遥か遠くになってしまったが、その輝きはいまでも変わる事はない。PVが全盛になる以前は、LPの紙ジャケのみが音楽のイメージを伝えていた。

 ただし、ある革新が起きる前までは、音楽家の肖像写真や、演奏する光景を撮った写真等ばかりが使われていた。まだ、音楽をもっと創造力豊かに伝えようという考えはなかった。主役は音楽家というのが常識であった。

 そんなLPの紙ジャケに革新を起こしたのが、60年代後半のビートルズであった。「サージェントペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブバンド」という、あまりに有名なアルバムでは、ビジュアルのイメージもまた革新性に満ちていた。

 この「サージェントペッパーズ〜」以降、音楽家はビジュアルのイメージも重視していく。そして、音楽の新たなイマジネーションの扉を開けた「ピンクフロイド」が、満を持して登場したのであった。

「ピンクフロイド」は、音楽とイメージを融合したスタイルを確立し、独自の世界観を構築して他を寄せ付けなかった。そのイメージづくりに貢献したのが、「ヒプノシス」というデザイングループである。

「ヒプノシス」は、70年代音楽のイメージを創り上げていた。まさに、ビジュアルイメージの最大功労者であったと言っても過言ではない。ひとつのビジュアルであくなき想像力を掻き立てる、その手法はいまでも新鮮に感じられる。

 しかし、それも80年代以降は、PVがイメージの中心になり、アナログはコンパクトディスクに変わって、「ヒプノシス」もビジュアルイメージのリーダーとしての訴求力を失ってしまった。

 1983年に「ヒプノシス」が解散してから、すでに30数年は経つが60年代後半から70年代に掛けて、かれらが創り上げたイメージの数々は、なんら色褪せていない。それどころか、かれらのコンセプトがもたらした革新性は、低迷する現在の音楽シーンにこそ必要な気がするが…いかに。

「ヒプノシス」は、ストーム・ソーガソンとオーブリー・パウエルによって、1968年に結成された。出版物のデザインなどが中心だったが、友人である「ピンクフロイド」のロジャー・ウォーターズから、2ndアルバム「神秘」のカヴァーデザインを依頼されたのをきっかけに、音楽アルバムを主体に活動していく。

 ビジュアルの特徴は、とにかくイマジネーションが豊かであり、また見るものに何か考えさせる力を持っていた。それは、コンセプトを重視し、矛盾や対比という「二面性」を意図的に隠喩として忍ばせていたからといえる。

隠喩=そのものの特徴を直接他のもので表現すること。

 単なるインパクトだけのビジュアルではなく、そこに何か意味がある。それが「ヒプノシス」ならではのデザインと思われる。しかも、ビジュアルの出来具合が半端無く素晴らしいのは言うまでもない。

 以下に何枚かのデザインを掲載しますが、これはほんの一例です。とにかく膨大な量のアルバムデザインをしています。しかも、その多くが70年代に集中しています。詳しくは以下をご覧下さい。

ヒプノシス(ウィキペディア)

レコードジャケットはアートだ!ヒプノシスの手掛けたアートワーク!(まとめ)

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ピンクフロイド「原子心母」1970年

 ジャケットのどこにもタイトルがありません。ただ牛さんが、不思議そうにこちらを見つめています。この表情がなんともいえません。別の意味ではその視線が気になります。何となく只ならぬことが起きる前兆のような、そんな雰囲気を漂わせています。

 しかし、それは不気味さとはほど遠く、静けさの背景に潜む様にしてあります。それ故に一層効果を上げている様に思います。

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ピンクフロイド「狂気」1973年

 ピンクフロイドの大ヒットアルバム、全世界で5000万枚を売り上げたとか。ビジュアルのプリズムは、あまりに有名となっています。いまでもTシャツの柄になって売られています。収録曲の「マネー」も大ヒットしました。
 
 このアルバムカバーは、どうやら四つ折りになるデザインのようです。

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レッド・ツェッペリン「Houses of the Holy(聖なる館)」1973年

 このビジュアルの摩訶不思議さは、一体何処からくるのか。とても衝撃的なイマジネーションだと思います。なんとなくデビッド・リンチの禍々しさを彷彿させます。悪いことが起こりそうな、とても不吉な予感に満ちた世界観を見せています。

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ピンク・フロイド「Wish You Were Here(炎~あなたがここにいてほしい)」
1975年

 これは、アルバムの表と裏に当たるらしい。透明人間は、何を意味しているのか。人間が燃えているのは何故か。なんて興味が湧き起こります。また、対照的なビジュアルが人間の持つ二面性を表しているかと思われます。

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10cc「How Dare You!(びっくり電話)」1976年
 
 誰と誰が繋がっているのか。関係あるのかないのか。そんな想像をしたくなるビジュアルです。なんだか映画のワンシーンの様な趣となっています。サスペンス、ミステリーといった雰囲気を漂わせて見るものの想像力を刺激します。

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松任谷由実「VOYAGER」1983年

 絶頂期のユーミンさんです。さすが目の付けどころが違ったようです。ちなみに、泳いでいる女性はユーミンさん自身だそうです。

 いずれのアルバムでも、そのビジュアル性は創造力に富んでいて見るものを刺激して止みません、いまの音楽シーンではこのような方法は流行りではないのか。それは知る由もありませんが、あまり見かけなくなったように思います。

 音楽は、アナログ、CD、ダウンロード、そしていまでは、ストリーミングが主流となりつつあります。そこでのビジュアルは、映像が主体です。もうこのようなビジュアルは必要がないのかもしれません。しかも創造性よりも、ミュージシャンが映像に出てくる方が好まれているようです。

 しかし、創造性豊かなビジュアルイメージを見て、想像を掻き立てるというプロセスを得る事が無く、音楽を聴くのはなんだか損をしているように思います。それは気のせいでしょうか?。

 ミュージシャン達は、機会があれば是非ビジュアルクリエイターが創造力を120%発揮できるように仕向けてほしいと願います。

追記:ビジュアルにそれぞれ解釈を加えましたが、それは単に個人的な想像においてであり、正解ではありません。創造力豊かなビジュアルは、幾通りもの想像を掻き立てるものがあり、個々の環境によっても変わってきます。ヒプノシスのビジュアルのすごさは、まさにそこにあります。

ピンク・フロイド・トリビュート – バック・アゲインスト・ザ・ウォール

ピンクフロイド「狂気」Dark Side of the Moon

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