その美術は既成観念を超えて誘惑する!
1960年代後半から70年代の作品を中心にアングラ演劇の傑作ポスター100枚を一冊にまとめたアングラ演劇ポスター集。
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60年代後半から70年代に華開いたアングラ演劇は、芝居のみならず舞台美術、衣装、化粧などの演劇を構成する周縁要素にも独特のものがあった。特に宣伝美術は、アングラの有した異次元性や独特の雰囲気をよく捉えていた。
たぶん予算もあまりなく、デザイナーにほぼ任されたと想像するが、その結果出来上がった美術はとてつもなく素晴らしい出来映えであった。そして、芝居と美術の相乗効果も大きかったはずである。
アングラ演劇とは、芝居のみで成立するものではなく美術やとりまく環境等を含めた特有の動きであり、ある意味では総合芸術といっても過言ではないだろう。
アングラ演劇のポスターに見るオリジナリティー
状況劇場「腰巻きお仙」デザイン/横尾忠則
横尾忠則、宇野亜喜良をはじめ、多くの個性的なデザイナー、画家がアングラ演劇のポスターを描いた。どれも出来映えは素晴らしく、オリジナリティーに溢れている。作家独自の個性を発揮し、かつ演劇に期待感を抱かせるデザイン性には秀逸なものがある。
どのような経緯でこのようなポスターが作られたのか。大変興味深いものがある。
たぶん、デザイナーたちのギャラなど微々たるものだったはずである。それでも作家特有の情熱と、何か得体の知れない時代特有の雰囲気がこれらの傑作を生み出す土壌となっていたのではないか。と思うのである。それにしても、演劇の主催者側も目利きが揃っていたようである。
天井桟敷と状況劇場という二大アングラ劇団に美術を提供した横尾忠則は、まさにアングラ美術の基礎を築いたデザイナーである。これには異論はないはずだ。このライバル関係にあった二つの劇団のポスターを両方制作しているのは、かれをおいていない。
何故、それが可能であったのか知る由はないが。それは、横尾氏の人徳なのかも知れない。しかし、寺山修司と唐十郎は、共に天才的な劇作家兼演出家である。
きっと、自分の演劇を最大限アピールするには、横尾忠則しかいないという天才故の直感が働いていたのではないか、と思うのである。いずれにしろ、横尾忠則がデザインした二つの劇団のポスターはどれも傑作である。それは、時代を超えていまも輝き続けている。
以下に、僅かであるが当時のポスターを紹介いたします。なお、冒頭で紹介のジャパン・アバンギャルド・アングラ演劇傑作ポスター集のなかにも収録されています。
状況劇場「ジョン・シルバー」 デザイン/横尾忠則
天井桟敷「毛皮のマリー」と「星の王子さま」 デザイン/宇野亜喜良
天井桟敷ポスター デザイン/横尾忠則
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