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■小説自作|なんでも始末屋 その6「見返り美人」

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その愛人には、危険な毒があった!?

<当該小説の概要>
 元チンピラのオレは、何故か探偵家業に勤しんでいる。しかも、ただの探偵じゃない、セレブ御用達である。相棒のケンタと共に今日も世の中の不条理に戸惑いながら、何とかそれらに立ち向かっていく。

 今回の仕事は、セレブの愛人の素行調査を依頼された。その愛人は二股を掛けていた。彼女はお金がどうしても必要だった、それは何故か。

なんでも始末屋 その6「見返り美人」

作:cragycloud
登場人物:オレ(元チンピラの探偵、格好付けたがり)
    :ケンタ(オレと同郷の金持ちの息子、楽しく生きたいがモットー)
    :オッサン(元新聞記者、如何わしい物書き)

 オレは、何故か胸が締め付けられる思いがしていた。耳元では、ハーッ、ハーッという息づかいが聞こえる。あまりに苦しくて、仕方が無く起き上がった。そのとき、大きな黒い固まりがオレの上から飛び退いた。

 くそー、オレの住むビルの番犬である獰猛と言われる犬種の大人しい犬だった。なんで、この部屋にいるんだ。とオレは寝不足もあって憤りを感じていた。

 オレが住むビルは、元はオフィスビルだ。高度成長時代に建てられたそうだ。現在では、地上げにあってまだ揉めている最中である。

 オレは、ある筋に紹介されて用心棒兼任でここに住んでいる。他の住民は、相棒のケンタと管理人と称する元新聞記者のオッサン、そしてこの獰猛で大人しい犬である。

 犬は、ふたたびオレの元に寄ってきて戯れたがった。分かったから、起きるからと犬に声を掛けて、仕方なく洗面所に向かった。ついでに相棒のケンタの部屋を覗いてみた。しかし、アイツはいなかった。

 そうか、普段、犬はアイツの部屋にいるはずだ。なるほど、そういうことか。ところでアイツはどこにいるんだ。なんてことを思いながら、洗面所に向かった。そんなオレの後を犬はずっと付けてきていた。

 まだ夜も明けきらない早朝の目黒の街を、オレは犬を連れて散歩だ。というか、オレが犬に散歩させられていると言った方が正確だろう。目黒通りと山手通りが交差する近くにあるコンビニに通りかかったときである。連れの犬が小さく吠えた、

 何事かと思ってコンビニを覗くとなんとケンタがいるではないか。何やってんだアイツはと思いながら、犬のリードをガードレールに結んで店の中に入った。

「いらっしゃませー」という威勢のいい声がした。ケンタであった。
「何やってんだー、お前は」とオレは言った。ケンタは吃驚して言った。

「あっいやー、あれっすよ。暇でしょ。金が無いし」
「2丁目はどうした?」ケンタは、以前新宿2丁目でバーテンのバイトをしていたのだ。

「あれは、そのー。しつこいのがいるんで。辞めたんだ」
「そうか、なんでオレに言わないんだ。言えよ」

 とオレは内緒にしていたケンタを攻めた。しかし、それもこれもオレのせいだ。このところ仕事にあぶれているからだ。仕方がない。むしろケンタは偉いもんだ。

 コンビニでバイトをしようなんて、オレには想像もできない。金が無くてもええ格好しいが優先するからだ。

仕事の依頼あり、セレブの愛人を素行調査せよ!

 それやこれやで仕事が途切れて一ヶ月ほどが過ぎた頃、オレの元請けである黒澤ロゴスから連絡があった。仕事の依頼だと言う。早速オレは、六本木にある会社へと出向いていた。いつもながらの豪壮な門構えを潜って邸内に入った。

 社長の黒澤は、いつもどおりの台詞を言ってオレを労った。

 そして、本題へと入っていた。今回の仕事は、いま世間を騒がせている芸能人セレブの愛人の素行を探れということであった。

 元請けの黒澤ロゴスとは、オレがかつて所属していた会社だ。元は警備会社の一部門だったが、その特異な業務から分社化された。

 ちなみに、ロゴスとは概念や意味、理性を表すそうだ。キリスト教では神のことらしい。いいのか、こんな名前付けてとオレは思っていた。とにかく大層なことである。

 この芸能人セレブは、何かと世間を騒がせている大物だ。最近では、その裏の顔がバレてきてメッキが剥がれつつあった。それでも大金持ちに変わりはないようだ。なんでも、本業は親の代から公共事業に食い込んでいる建築業らしい。

 それもあって、芸能の世界の稼ぎは余得なのかもしれない。愛人を囲うのも余裕だろう。なんでも億ションを買って住まわせているらしい。

 その愛人の動向に最近怪しい動きがあるらしく、今回の調査の依頼になったらしい。愛人は、元は銀座のクラブのホステスだそうである。

 なるほど、絵に描いたような愛人像じゃないか。セレブの行きつけの店だったらしく、そして何人目かの愛人となったそうだ。このセレブ、年寄りの割にはなかなか盛んなようだ。愛人の写真を見る限りでは、女優にでもなれそうな整った顔立ちだ。

 しかし、待てよ。AV女優にもいそうだなとオレは思っていた。その根拠は特になかったが…。


グランドプリンス高輪貴賓館

 オレは、六本木に来たついでに服を買っていくことにした。そろそろ冬になるので活かしたコートなどが欲しいところだ。そんな思いを抱いて、行きつけの服屋に向かった。この洋服屋は表通りではなく、住宅街のなかにある。

 しかも一軒家だ。表には看板もない。実は、バッタもんとブランド品の偽物が専門の洋服屋だ。そこでは、小売りはしておらず、卸が専門だ。当然の如く、その筋の関連した会社であった。元請けの黒澤の知り合いだから安くしてくれるのだ。

「お、どう最近は。忙しいの」とヴェルサーチを着た洋服屋の社長が言った。
「いや、暇でした。ようやく仕事が入ったところです」

「黒澤さんも、渋いやろ。金はちゃんと貰えよ」と黒澤を知っているこの社長は言った。
「今日は、何が欲しい」

「冬物の格好いいのがないかと思ってるんですが…」
「そうか、これなんかどう?アバクロだけど。もちろん偽物」と当然のように言った。

「カジュアルもいいけど、スーツとかコートとかは」
「そうだなー、じゃラルフとかカルバンなんてどう?」

 オレは、カルバンのスーツとコート、それにアバクロのダウンを買った。おまけにマフラーをくれた。しめて2万円であった。本物ならその十倍近くするはずだ。

 偽物とはいえ縫製はしっかりしていると社長は言っていたが、それはどうだか怪しい。それでも、まー満足であった。オレ自身が、本物とはほど遠い存在だから、これでいいのだと言い聞かせてもいた。ただし、いずれは本物を手に入れるつもりだ。

 目黒の住居ビルに戻ったオレは、コンビニの夜勤明けで寝ていたケンタを起こした。

「おい、お前にプレゼントだ」とオレは偽もんのアバクロのダウンをケンタに渡した。
「え、まじ!これくれんのホントに」、怪訝そうなケンタであった。

「お、まじよ。3万したからな」とオレは吹っかけた。
「アバクロじゃん。欲しいなと思ってたんだ」、嬉しそうな顔のケンタを尻目にしてオレは言った。

「仕事が入ったぞ。セレブの愛人の素行調査だ」

 セレブの愛人は、高輪の高級マンションに住んでいた。当然、セレブが買い与えたものだ。しかし、名義はセレブのものらしい。

 このマンションは、比較的あたらしく、周辺も一緒に開発されてスーパーなどもあり買い物は便利そうだった。かつては、高輪あたりは住むには不便な場所だったらしい。たしか近くには都ホテルという高級ホテルがあった。

 オレとケンタは、交代でこのマンションに張り付くことにした。ケンタは、コンビニの夜勤が週に3日ほどあるので、その日を含めてオレが張り付くことが多くなりそうだった。ケンタの唯一の財産であるインプレッサに乗ってオレたちは高輪に向かっていた。

 久しぶりの張り込みである。鈍っていた体が多少気になるが、なんとかなるだろう。しばらくは、寝不足との戦いだ。

 アバクロの偽もんのダウンを着たケンタは上機嫌だ。インプレッサの車検が切れるまで日が無いのも気にせず、キレのいい運転で車を走らせている。ケンタは、車の運転がうまい。好きこそ物の上手なれとか言うが、その通りだなとオレは思っていた。

つづく

以下は、蜷川実花とコラボしたエレガンス&ゴージャステーストのイヤリング!

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