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■時代と流行|流行の発祥は貴族にあり? 特権階級と自己顕示欲

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中世では、流行は一握りの特権階級のものだった

大英帝国の王族、貴族の流行とは

 大昔のイギリス、まだ大英帝国がようやく成立しだした頃のことであるが、王族や貴族という特権階級の間では、衣装という身に付けるものに異常なまでに気を使っていた。それは、いま見るとまるで”きゃりーぱみゅぱみゅ”のような出で立ちであり、そのような格好をすることが特権階級の証ともなっていた。

 エドワード3世の時代では、それが行き過ぎたせいか贅沢禁止令が出されていた。何故、それほどまでに王族や貴族が衣装にこだわったのか。それは階級化社会と関係があるといわれる。ほんの一握りの特権階級は、それ以外の人々とはっきりと違いを見せる必要があった。

 いわゆる特権とは、権力に他ならない。それをいつでも一般大衆に感じさせることで支配力を維持する、という目的もあったとか。要するに一般大衆とは隔絶した違いのある見た目が必要だった。それが衣装だったという訳である。

 それに対して、一般大衆は極端にもボロ布をあてがわれていた。しかも、その衣装には決まりがありそれ以外のものは着てはならないとされた。その頃の大衆には、流行等は以ての他であったのは言うまでもない。

 そんな権力者たちの衣装の流行は、留まる事を知らず変化を続けた。流行とは、絶えず変化しなければならない。そして、変化をいち早く取り入れることで他人(もちろん特権階級の中で)よりも秀でているというスノビズムを満足させた。

 スノビズムとは、上流意識を満足させることである。つまりは自己顕示欲を満たす行為であるともいえる。もっといえば、所詮は自己満足である。

 流行とは、端的には”自己顕示欲=自己満足”のたまものといえる。

 中世から19世紀?まで続いたその様式(スタイル)は、産業革命の進展とともに変わっていくことになる。それは、産業革命で衣服の大量生産が可能となり、それを大衆に売ることで多大な利益になることが分かったからだ。

 そして服を大衆に売るためには、流行という方式が理に適っていた。流行のスタイルを作り上げて、それを変化させていく。そうすることでさらに多くの服を販売することができる。これまでに培った経験を生かして商売にすることにした。

 流行を大衆に譲り渡した特権階級はどうしたか。これまでと違って流行ではなく、トラッド(伝統的スタイル)という保守的な様式美を自らのアイデンティティーとすることにした。

 大衆が流行に浮かれているのを尻目にして、特権階級は地味で目立たない衣装をトレードマークとしたのである。ただし、その品質は特上級であったのは言うまでもない。これが、現在に続く特権階級の衣装となっている。

 現在の英国の王室を見れば納得すると思われるがいかに。

 最近のイギリスの王室では、大衆化路線が進展してウィリアム王子の妻は大衆服である大量生産品を着ている。それは、王室が大衆の好感を獲得する必要があるからに違いない。特権階級に変わりはないが、権力を誇示する時代ではないからだ。

 お騒がせセレブとして名を馳せたパリス・ヒルトンはどうなんだ?、という疑問もあろうと思うが、アレは単なる金持ちの娘であり王族でも貴族でもない。したがって、金に飽かせて目立っているだけのどうでもいい存在といえる。

 しかし、大衆を流行という目くらましで誤摩かすには、ちょうど都合のいい存在であった。だからセレブ(有名)となっただけである。違うか。

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エリザベス1世(ヘンリー8世の娘、在位:1558年 – 1603年)

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ヘンリー8世(在位:1509年 – 1547年)

 ヘンリー8世は、希代の洒落者として有名である。載冠式には、白テンの毛皮の付いた深紅のローブ、金、ダイヤモンド、ルビー、エメラルド、真珠その他宝石で飾り立てたジャケットという装いで臨んだ。王に倣って貴族も派手な衣装で飾り立てた。仮面舞踏会などは豪華絢爛を絵に描いたようだったといわれる。

 かなり端折って解説しましたので、一部で意味不明の箇所があるかもしれません。詳しくは、上の書籍をご覧ください。なんだ宣伝かといわれれば、そのとおりです。

流行の一般化は、貴族ブランドまで大衆化していく

 現在の日本では、ヴィトンやエルメスなどの貴族発祥のブランドも、一般大衆人であるOL達にとっては単なる一ブランドでしかない。かつては、それを使用していることは地位や裕福さを表していたが、いまではOLが少し奮発して貯金をくずして購入している。そこにはもはや、特権階級を表す記号性はないに等しい。

 高級ブランドの売りのポイントは、特権階級に関わった歴史があるかないかにある。いまでは本物の貴族が振り向かなくても一向にかまわない。ブランドには、培った歴史性が残されているからだ。そこに一般大衆は、身も心を刺激される。そして、それを自分のものにすることで自己満足に浸るという具合だ。

 高級ブランドの一般大衆化は進んだが、それでも大衆には超えられない壁も残された。それが、数に限りがある注文生産品のプレタポルテと呼ばれる超高級品である。これにはさすがの日本のOLも手が出せないどころか、近づくのさえ困難であるに違いない。ただし、芸能人という特権を手に入れれば可能かもしれない。

 ブランドのなかには、実際には歴史性がないにも関わらず、それに類するスタイルを売りにして有名ブランドとなる場合がある。例えば、ラルフローレンなどがそうである。アメリカには、大金持ちはいても王族や貴族はいない。

 そこに目を付けた(と思われる)デザイナーは慧眼であった。

 ラルフローレンは、イギリスの紳士や淑女のライフスタイルをなんとなく彷彿させるような洋服や生活品を提供してブランドを確立した。歴史の無いアメリカの人々は、そこに憧れとルーツを見いだしていた。一応、このブランドではアイビースタイルとしているが、どこから見ても英国スタイルが基本にある。

 特権階級のライフスタイルをブランドのコンセプトにする。それはある意味ではバッタもんである。したがって、当然のようにターゲットは大衆である。しかし、それでも金持ち(成金)となった人々の気持ちをくすぐったに違いない。手を伸ばせば届きそうなぐらい近くに特権的なスタイルがあるからだ。

 アメリカの金持ち(保守的な)のある程度の自己顕示欲=自己満足を満たしてくれる。そのようなニーズに見事に応えたのがラルフローレンであった。

 ちなみに、ラルフローレンのロゴマークは、イギリスのスポーツでもあるポロのシルエットである。(ポロ/ラルフローレンと表記する場合もある)

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ラルフローレンの現代の貴族的ファッション

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