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■アート|現代美術の不可解 その意義とは何だ

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現代美術は単なる投機の対象か、それとも文化なのか

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ダミアンハーストの作品

いつから、現代美術=アートナウというのか

現代美術といわれる美術界のジャンル?がある。この現代とは、いったいどの時期からを指すのかと疑問であった。個人的には、戦後(第二次大戦)に美術のメインストリームが欧州からアメリカに移った頃からと思っていたが、しかし、すでに70年ぐらい経つので現代とは言えないはずである。そうすると60年代のポップアート以後あたりからとする方が現実的かもしれない。

しかし、それでも、すでに50年は経過している次第である。

なお、美術業界的には以下のような定義がされている。しかし、それも数がありすぎてどれを真の定義とするか意見が割れているようである。

<現代美術の定義> :ウィキペディアより

1. 20世紀初頭のフォーヴィスム・ドイツ表現主義以降を現代美術とする考え方
2. 20世紀初頭のキュビスム 以降を現代美術とする考え方
3. 20世紀前半のシュルレアリスム・抽象絵画(抽象美術)以降を現代美術とする考え方
4. 第二次世界大戦後(1945年以後)の美術を現代美術とする考え方
5. これらとは別に、20世紀以降の美術全体を現代美術とする考え方
6. それ以外のもの

上記の定義を改めてみるとやはり第二次世界大戦後(1945年以後)の美術を現代美術とする考え方がいまでも主流なのかもしれない。戦後美術はそれ以前の美術に大きく影響を受けているのは間違いない。しかし、美術のバックボーンというか成り立ちのようなものに変化があったのが、戦後ではなかったか。

戦前は、言うまでもなく美術の主流はヨーロッパであった。キュビズムやシュールリアリズム、ダダなどの革新的美術運動はすべてヨーロッパから生まれたものである。それが、戦後になって一気にアメリカが美術の中心となったのである。それは何故かといえば、戦中に迫害されたヨーロッパの美術家の多くがアメリカに移住したことが主な要因であった。

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ネオダダ ジャスパー・ジョーンズ 星条旗

アメリカはここぞとばかりに現代美術の中心地として、そして優位的な自国文化としてそれを醸成することに乗り出した。なにしろ歴史の浅いアメリカは、世界に誇るべき文化にとぼしかったのである。故に、この機会はまたとないチャンスであった。世界の覇権を英国から奪ったアメリカは、それにふさわしい文化も必要だったのだ。

アメリカは、国策として現代美術を後押ししていく。また、アメリカの財閥企業であるロックフェラー、モルガン、グッゲンハイムなども美術館やそれに付随する機関にお金をつぎ込んだ。何故、大企業がこぞって美術にお金をつぎ込んだかといえば、アメリカは、美術に税収面で優遇を与えたのである。たしか、そのような筋書きであったはずである。

それによって美術の取引が活発になり、美術市場はアメリカで巨大化していった。また作家もそれに支えられて制作機会が増えて潤ったのである。世界中の作家がアメリカを目指してやってきていた。そんな状況が生まれたのが、戦後からしばらくした頃からであった。たしか、1950年代からそれは顕著となったはずである。

アメリカを現代美術の聖地と言わしめる神となって現れたのが、1950年代に脚光を浴びたジャクソン・ポロックであった。現在では、抽象表現主義と呼ばれるその絵画は、アメリカにはじめてのオリジナリティーある文化をもたらした。そして、それ以降は、アメリカが美術の中心となって世界の美術市場を牽引していくのであった。

アメリカは、目論み通りに世界の覇権と文化の中心を獲得したのであった。このように現代美術の経緯を考えると、アメリカの覇権が終わらないかぎり、1945年以後を現代美術とする定義が、もっともそれらしいと思わざる得ないのではないか。と思う次第である。
なお、上記内容は正確とは言えないが、大筋は間違っていないはずである。細かいところは端折ったので分かりにくい点があったかもしれません。あしからず。

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ポップアート 上/リキテンスタイン 下/アンディ・ウォーホル

現代美術は、何の役に立っているか

ポロックの登場からすでに60年ほどは過ぎた。かれのアクション・ペインティングの絵画はいまでは天文学的価格となった。今後は、もはや取引さえままならないのではないか。戦後の現代美術を飾った抽象表現主義以降、ネオダダ、ポップアート、コンセンプチュアルアート、ミニマルアート、ニューペインティング、インスタレーション、シュミレーショニズム等々。

現代美術は、あれこれ姿形を変えながら現在に生き続けている。その精神性は20世紀美術の系統を受け継いだ上でさらに次の時代に向かっているはずである。しかし、現代美術の幕を開けた先駆者たちと現在の作家たちが大きく違っている点がひとつある。それは、現在の作家は成功するとたちどころに莫大な金銭的見返りがあるのである。

現代美術の実質的な創始者と言えるマルセル・デュシャンは、ほそぼそと自作のミニュチュアを入れたボックスを売って生計を立てていた。かれは、けっして大金持ちにはなっていないようである。それに対して、現在の作家はうなるほど金を稼いでいる。例えば、生存する現代美術家で最も高額な作品価格だと言われるのが、ダミアン・ハーストという作家である。

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上/ハイパーリアリズムの作品 下/ニューペインティング バスキア

かれの作品は、数十億円で取引されている。また、かれは自身の作品を作る会社の経営者でもある。そこでは100人以上が働いているそうである。現在では、作家は自ら作品を作ることはしない、指示をだして社員が作るのである。それは、さながら美術工場である。工場だから、当然多数の作品が製品のごとく制作される。

そうした作品は、ギャラリーを通じてコレクターに売られて行くのである。価格は半端ないから一般人は相手ではない。購入者は、作品を資産または投機として買う富裕層や投機筋である。これが、昨今の現代美術の現実である。穿ちすぎかもしれないが、当たらずとも遠からずのはずである。

現代美術は、かつては社会の常識や閉塞感に対し、風穴を空けるかの如くその存在感を示していたと感じる。時代を動かす、またはその行く末を暗示してさえいたはずである。しかし、昨今では何かが違うようである。それは、現代美術が、大きな投機ビジネスとなったせいではないか。そのように思うが如何に。

作品の価値は、金銭で評価される。仮想通貨ビットコインと同じく、投機として役に立つ、それが、いまの現代美術である。違うか!

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自作の前に立つダミアン・ハースト

追記、ダミアン・ハーストを揶揄したような内容であるが、実は当該ユーザーはその作品が嫌いではない。デュシャンと同じくらい好きかもしれない。また、上記内容で何が言いたかったかというと、ただ客観的にいまの美術のあり方を捉えてみたかっただけである。(当該ブログユーザー)

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本書を読めば、現代アートの謎解き、鑑賞ノウハウ、ものの見事に、わかります!
<現代アートビジネス/内容紹介より>
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